ろくでもない男
ゲームにログインする。
当然と言うべきか、一緒にログアウトしたアカネの姿が見当たらない。
今日は私一人でやれということらしい。そりゃそうだ。いつもアカネが手伝ってくれるわけではない。
「やることはインダラのレベル上げ、テイマーレベル上げだな」
私は平原へと場所を変え、インダラを召喚する。
インダラは召喚されるや否や、グルルと唸り声を上げ辺りを警戒している。
昨日戦った親個体はとても恐ろしかった。勝てるものじゃないと直感で理解出来るくらいには凛々しく、猛々しく存在を放っていた。
この子もそれに違わず、辺りを警戒している。
敵に回しているときは恐ろしい戦士だったが、味方に回すと頼もしい騎士へと変わっていた。
「グルルルル……ガルゥッ!」
インダラは一角ウサギ目掛けて駆け出していく。
速さは稲妻のよう。
光速で敵を仕留めこちらにやってくるインダラ。インダラを撫で回す。
「よくやった。えらいぞ」
「ガルッ」
インダラは犬というにはゴワゴワした毛並みであり、モフモフもいう感じではない。
だがしかし、狼としての凛々しさ、猛々しさがインダラにはあり、とてもカッコいい狼だ。
「さぁ、インダラ。この調子でやっていこうか」
「ガルルルル……」
行こうとした矢先、インダラは突如として吠え出したのだった。
近くに魔物がいるのか? と思ったが、インダラは私の背後にいる何か目掛けて突撃していく。
「ぐあっ!」
「プレイヤー?」
「ガウッ!」
「んだこの犬っころ! こんな魔物初心者にテイム出来るわけが……!」
名も知れないプレイヤーが襲われていた。
プレイヤーを無差別に襲うのか? いや……。違うな。そういうシステムにはなってないだろう。
悪意に反応したのか? 人間の悪意から私を守ろうとしたのかもしれん。
わざわざ剣を構えてこちらに近づいてきていたようだし、碌なものではないなこいつは。
「死ね犬っころ!」
「ガルルァ!」
稲妻のように素早く動くインダラ。翻弄される男。
「何が何だかわからんが……。インダラ、そのまま殺してしまえ」
「ちっ……」
男は逃げようとしていた。
インダラは逃げようとする男を追跡しようとしていたが、突如消えてしまう。
なぜ消えた……!?
「あーあー……。テイムした魔物は10分間しか呼び出せないんだぜー?」
「そうなのか……」
「呼び出すためにはクールタイムが必要だァ……。ひひっ」
「……」
私は全力で逃げ出した。
今や私の手元には戦えるカードがない。一角ウサギをテイムしてなければ、インダラを今現在呼び出すことができない。
あれはきっと噂に聞くPKの類だ。プレイヤーをキルして快楽を得るような腐った性根のヤツ。
私は全力で逃げている時だった。
「ひひ、追いついた! 死ねっ!」
「テメェがな!」
突如、剣を振り下ろそうとした男の顔に鉄拳がめり込んだ。
そして、男は死んだのかそのまま動かなくなり消えていく。
私は助けてくれた人の方を向く。
金髪長い髪の可愛い女の子が立っていた。
「無事か?」
「ありがとう」
手を差し伸べてくれた彼女の手を取り立ち上がった。