運動神経が悪すぎる
悉く、私の運動神経は悪いのだと認識する。
雑魚敵との戦闘。多くのプレイヤーにとっては最初は少し苦戦するであろうものだが、死にかけることはないだろう。なぜなら最初の雑魚だから。
だが私の場合は。
「魔物の攻撃を避けれないでほぼ全ての攻撃に被弾……w」
『反射神経悪すぎて草』
『最初の雑魚敵で死にかけてるやつ初めて見た。いや、連戦とかしてるならあるけど1回目で……』
やはり私は身体を使うのが好きではない。
運動を昔から毛嫌いし、動かない努力をしてきたため運動音痴は治っておらず、むしろ年々悪化している。それが顕著に出たな。
「流石にそこまで悪いとなんかバトルさせるの申し訳ないなー……。かといって生産職っていうのも華がないし……。私がバトルでクオンが生産ってなったら二手に分かれること多くなるしダメだよな〜。うーん……」
「頭を悩ませてしまってすまないね。ゲームでも私の運動神経の悪さは変わらぬようだ。ここまで来ると笑えるだろう」
『テイマーは?』
「それだっ!」
アカネが大きな声を張り上げそれだと叫ぶ。
私はテイマーと言われても何がなんだかわからないので、とりあえずアカネに従うことにした。
アカネにつれてこられたのは転職ギルドという施設。ここでは転職というジョブチェンジを行えるところらしい。
アカネに言われるがまま、私はテイマーと書かれた職業を選択しジョブを変更する。
すると、私の目の前には突如本が現れたのだった。
「なんだい? これは」
「テイマーブックと呼ばれてるものでね。テイマーになったらそれが確実に与えられるんだよ。他職業で言う……剣や杖みたいなものだね」
らしい。
最初に新たな職技を選ぶ際、必ず一番レア度の低い専用武器を貰えるんだそうだ。
テイマーはこのテイマーブックというもの。開いてみるが、中は全部白紙。何も書いてある様子はない。
「テイマーはね……。私もやり込んでないからわかんないけど、魔物をテイムできるんだよ。テイムって唱えたら唱えた魔物を確率でテイム出来るんだ。その魔物の大好物とか上げたりすると確率も上がる」
「……ページが10ページしかないが、これに記録されていくのか? テイムした魔物が」
「そう! 一魔物につき一枚! だから初期状態では最高10体が限度! テイマーレベルを上げていくとテイムできる魔物の数が増えていくし、やれることも増えてくるんだとか。私はまだ全然やり込んでないし偉そうに教えられないんだけど」
なるほどな。
テイマーレベル……。ようするに職業レベルを上げていくには、職業スキルを使うことで経験値が入っていくらしい。
剣士や狩人などは戦うごとに職業レベルにも経験値が入っていく……それは剣士なら剣使いスキル、狩人なら弓使いスキルというのが職業スキルに該当するかららしい。
テイマーの場合はというと、魔物をテイム成功させると上がっていくらしい。
なぜ成功しないと経験値にならないのか。疑問を唱えると。
「安易なレベリングを許さないんだろうねー。成功率がめっっちゃ低い魔物に魔力回復しながらテイム唱え続けてるだけで上がるようになっちゃうし」
「なるほどな。理解した」
「でも、いい点もあるよ? 例外はあるらしいけど、テイム成功=戦闘勝利になるから経験値が入るの!」
「そうなのか」
なるほど。それならば毎回テイムを成功させれば……。いや、それは机上論か。
もちろん、テイムできない魔物もいるのだろう。そして、テイムした魔物を召喚して戦わせることもできるという。その魔物頼りに進んでいけばなんとかなるだろう。
「ま、ここでうだうだ話してるよりもやってみる方が早いよ! さ、行こうか!」
「習うより慣れろ……というやつだな」
実戦で学んだ方が早そうだ。