不思議の国
私が今現在飛ばされてしまったのは先ほどの平原とは違う場所だった。
いや……平原といえば平原なのだが、目の前にはあんなファンシーな居城なんてなかったはずだ。
それに……なんだこの田園風景は。
「クソ、アカネとはぐれた……。アカネもどこかに飛ばされてるんだろうな」
それと少し視界が変なように思う。
視線が低い……?と思い、下を見ると確かに地面が近い。というか……。
「なんだこの手は……。あからさまに人間の手ではない」
もふもふとした手だった。
まるで動物の……。
「……なんじゃこりゃ」
近くに水たまりがあったので自分の姿を確認してみると、さっきテイムしたような黄金のウサギ……というほど輝いてはいないが、金色に光る毛並みをもった二足歩行のウサギになっていた。
なんで人間やめてるんだろうと思っていると。
「いてて……。ここどこだ?」
と、アカネの声が聞こえてきたのだった。
私がこんな姿になったんだからアカネも何か動物の姿になってるんじゃないかと思ったが……。
「……嘘だろう」
アカネは普通の人間の姿だった。
いや、人間も定義的には動物の一種とはいえどこれは差別ではなかろうか。
「クオンともはぐれちゃったし……。早いところ合流しないと……」
「アカネ」
「クオン!? 無事……じゃない!?」
「ウサギの姿になったんだが」
「かわいい……」
アカネは私を持ち上げたのだった。
小さく軽いウサギの姿になってしまった私はアカネに抱き上げられ、抵抗することもままならなかった。
リスナーのやつらもかわいいと持ち上げてくる始末。あまりうれしくはない。
「なんでウサギになってるの!?」
「知らないよ。気が付いたらこんな姿になってたんだ。それより……なんだここは」
「さぁ? 黄金ウサギのストーリーだとか言ってたけど……」
「ふむ……。まぁ、進む以外ないか。あそこの城にいってみるほかないだろうな」
「そうだね」
とりあえずストーリーだというのなら進めていくほかないだろう。
ストーリーをクリアさえすればこのウサギ姿からも戻れるだろうしな。
「……おんぶしたまま向かうつもりかい?」
「だめぇ?」
「歩かせろ。あまりこういった扱いをするな……。恥ずかしいだろう」
「えぇー!」
アカネは泣く泣く私を地面に降ろし、私たちは目の前に見える城へと向かうことにした。
城のてっぺんには赤いハートマークのようなものが設置されておりとても特徴的だった。城の前には門番が立っているが……。
「なんだあれ。トランプか?」
「スペードの10に……。ダイヤのエースだね」
トランプのような図柄をひっさげた四角い兵士たちが門番をしていたのだった。私たちは近づくと、その兵士たちに引き留められる。
「何者だ」
「えっ」
「金色ウサギ様を連れて……何しに来た」
「何しにって……」
兵士たちと押し問答をしていると、城の中からつかつかと誰かが歩いてきたのだった。
女性……? モデルのようにつかつかと歩いてくる女性はこちらを見ると。
「ふぅん……。おい、通してやれ」
「えっ、ハートの女王様……。いいのですか!?」
「よい。そいつらは危害を加えぬだろう」
ハートの女王……。
「不思議の国のアリス……?」




