探してみる?
現実世界へ戻り、私は焼きそばを炒めていた。
焼きそばのソースの香りがキッチンを包み込む。焼きそばを皿に盛り付け、アカネの目の前に置く。
アカネはスマホを弄っていた。
「金色ウサギ……。目撃例はあるっぽいよ」
「本当か?」
「幻覚……ってわけでもなさそうだ」
私は焼きそばにマヨネーズをかける。
「ただ……ちらっと目に入ったって人だけだからまだ信じるには値しないかなー……」
「そうか。まぁ、私の幻覚という可能性もまだ否定できないわけだな」
「そゆこと……。んー、焼きそば美味しいねー。昔から料理得意だよね」
「レシピ通りにやってるだけだがね。レシピ通りにやればまず失敗はせん」
「私変なアレンジ加えちゃって不味くしちゃうんだよねえ」
料理初心者がやりがちなミスだな。
「それよりも、だ。本当に探すつもりか? 私がちらっと見ただけの都市伝説的なものだろう。捜索に時間を食って他のことがおざなりになるのは勘弁してもらいたいね」
「まあ……あまりにも見つからないようだったら打ち切るよ。でも、何があるかまだ分からないのがアナオンだからねー」
「そういうのは調べ尽くされていそうなものだがね」
「そうとも言えないんだよ。昔のゲームでも20年越しに新たな仕様とか見つかったりするからね。金色に輝くウサギがいないと言い切れないのは目撃例もあることなんだけど、まだ見つかってない可能性もあるからなんだよ」
「ふむ……」
まあ……公式が明かさない限りプレイヤーで見つけていくしかないからな。
上手いこと隠れられていまだに見つかってないものとかまだ探せばあるのか。
「まだ発売から一年しか経ってないからねー。まだまだ私も把握してないことばかりなんだよ」
「一年もだろう」
「しか、だよ。ま、配信してリスナーからも目撃例とか募って探してみよう。人が多いに越したことはない」
「そうだな。今日やるのか?」
「告知してあるからねー。やるよー」
「わかった」
私は焼きそばを一気に口の中へと入れていく。豚バラ肉ともやししか入っていない簡易的なソース焼きそばだったが美味しかった。
皿をキッチンへ持っていき、皿洗いを始める。
「皿洗い時間かかる?」
「今日やること知らなかったからな。昼の分とかもろもろ溜め込んでいるし少しかかる。あとで合流することにしよう」
「んー、それだとねえ……。洗い物後回しにしていいからやろ!」
「汚れが……。仕方ない。水に漬けておくか」
水を溜め、食器をその中に漬け込んだ。
手を拭き、私はゲームを始めるべく機械の上に寝そべる。そして、ゲームを起動し、アナオンの世界へと足を踏み入れたのだった。




