第十五話 ねじれの位置・前編
「一連の怪異の事件、発端は魔術部門ですが……どうやら研究部門の方も一枚噛んでいるようでして」
「っ」
「研究部門」
「はい。……東雲さん、大丈夫ですか?」
説明を受けただけなのに東雲の顔色が非常に悪い。とあだけじゃなくみうとスミレもわらわらと近付いて宥めている。もちもちと小さな手が頬やら頭やらを撫でまわしているのは分かるが、ついでのように撫でまわされているイデアが何をしたいのかは分からない。
「研究部門が一枚噛んでるとして……東雲を魔術部門の方で匿っていた?のは何でですか?」
「一種のカモフラージュでしょうね。研究部門が現場の職員を連れて行ったとなれば、幾ら偽装しようとも必ず上層部から直々に経過観察命令が下ります。幸いと言っていいものかは分かりませんが、上層部は研究部門に人材が割かれるのを厭う傾向にありますので……」
「なるほど?」
良かった、上層部としても研究部門の横暴は見逃せないことだったのか。ある意味それが分かったのは大きいかもしれない。いまいち信用ならないのかもしれないとずっと思っていたけど、一応倫理観はあるのか。
「じゃあ……最初から、私は実験体としてしか、見られていなかったということですね……」
「たーて……」
眉を下げてぎゅうぎゅうと抱き着くとあを抱きとめる東雲。喩え誰が慰めても、本人が納得出来なければ救いには成り得ない。ましてや本人が一種の答えを持っているのならば猶更。
「……東雲さん、仮にそうだったとしても、今は違いますよ」
「……そう、ですね」
「俺は、同情で人は採りません」
はっきりとした発言に、東雲が思わずといった風に目を瞬かせる。あまりにも堂々とした発言で、そのまま納得してしまえるような強さがあった。
「言ったでしょう、貴方のことを大切に思い、共にありたいと願っている、と。俺はリアム程人の機敏が分かりませんし、腹芸なんて以ての外です」
……俺の記憶が正しければアランさんは交渉とかもやっていたような気がするが、腹芸が出来なくても良いんだろうか。文脈的にリアムさんは人の機敏が分かるようなので、適材適所とは真逆の方向性を走っているような気がしないでもない。
「俺は言葉通りの意味で貴方を勧誘しましたし、仮にこれからそれ以上の意味が乗るとしたら、経験から派生した信頼くらいです」
まるで揺らがないアランさんの言葉。……ふと、この人に関しては腹芸が出来ないことが一種の強みなんじゃないかと思ったが、口には出さなかった。
「みみみ……」
「?」
ストレートに好感情をぶつけられた東雲が茹でられたように頬を染めている。みうが呆れたようにアランさんに何かを言っている辺り、多分これが初めてじゃないんだろう。
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