第十話 ”収容所”
「かつて、ヒュリスティックは収容所と呼ばれどこともしれぬ座標に身を置いていた。重戦闘区域に妖怪がいる理由であり、各区域への移動が困難な理由でもある。ただ収容所、と呼ばれていた時代の建物は破壊されて修復不可になってるから……資料自体はここにないんだよね」
「そうですか」
アランから収容所っていう単語を聞いた時には驚き通り越して最大級の警戒態勢を敷きかけたけど、わざわざジャックから話してやれとかいう指示が出るとは思わなかったよね。流石に意味はあるんだろうって信じてるよ、収容所時代を探ろうとするやつに碌な奴はいなかったけど。
「具体的に何の資料が欲しいの?」
「一番欲しいのは外出記録ですかね。あと研究部門での記録はあればあるだけいいですけど」
「研究部門の記録……あるとは思うけど、大体持ち去られてるかも」
「とにかく外出記録だけでも見つけられれば御の字ですね」
「外出記録ねぇ……」
話を聞く限り、外出記録が必要なのは行方不明者を探す目的があるんだろう。正確にいうと多分研究員たちが”外出していた”時期が行方不明になった時期と重なる可能性が高いと踏んでる。
「確認してどうするの?詰めるには弱いでしょ」
「別に正攻法で対峙する予定はないので」
おや意外。搦手を使うこと自体は寧ろ歓迎するけど、比較的に気さくで快活な性格で通ってそうな相手が初手から正攻法を捨ててるとは思ってもみなかった。
「……入江の探し人ってさ、養子になる前?後?」
「前、直前と言い換えても良いですね」
「その時期だと微妙にこっちだと思うけど。旧セントラルが壊れた後だから」
「成程……」
……しれっとコイツ、入江の記録も持ってそうだな。以前依頼を受けたと言っていたし、その時点で戸籍とかは調べているんだろうけれど。……民間企業、それも多分個人経営の事務所にしてはちょっと情報網が厚すぎる。警備隊が懇意にするくらいには無視出来ない存在、っていうことかな。
「お前が入江と知り合ったのって一体いつなの」
「綾華が入江になってからですよ?丁度拠点を移動した直後だったのでよく覚えてます」
「拠点移動?」
「所長が遣霊持ちなので。カモフラージュの為に転々としてるんですよね」
「一般の遣霊持ち!?」
なんてことないように話された内容がちょっと重要過ぎる。一応ヒュリスティックって遣霊持ちの保護も請け負ってるはずなんだけど、一般区画で平穏に過ごすのって相当厳しいって聞いてたんだけど。……いや逆か、そんな厳しい状況でも過ごせるくらいには多分酒見事務所の影響力が強い。
「……所長何者?」
「自称ただのお人好しですよ?ちょっとカリスマが凄いだけの」
「絶対それだけじゃないじゃん……」
仮にカリスマだけでその平穏維持出来てるんだったらちょっとコンちゃん辺りにそのノウハウを伝授してほしい。下手したら重戦闘区域よりも平穏説あるよね???
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