第七話 無名の賢者
「ノエルさん、ヒュリスティックとも縁があったんですか」
「そうだぞー。依頼内容によっては戦闘区域にも行くからな!」
「それ大分グレーな内容では?」
「ふふふ」
意味ありげに微笑むノエル君。ルコンが連れて来た時点でちょっと予想してたけど、案の定この子はかなりこっち側に近い生き物。もしかしたら妖怪なのかもしれないし、その中でも上位に位置しそうな気配はあるよね。
まだ絶対安静が言いつけられてる大雅の元へ訪れたノエル君。宇月君が藍沢先生のところに用事があったらしいから俺は大雅の監視目的で一緒にいたんだよ。ルコンが誰か連れて来たって話は聞いてたけどこのタイミングで会うとは思わなくてびっくりしちゃった。
「酒見事務所……だっけ、どんなところなの」
「何でも屋です!人探しでも猫探しでも、店の手伝いでもなんでも!人員は少ないけど仕事はちゃんとしますよ!」
「へぇ?」
「酒見事務所は警備隊の中でもそれなりに知られていますね。警備隊が関与しづらい部分の治安維持や場合によっては情報提供もしてもらっていると聞いています」
「警備隊は大抵上から目線だけどな!それでも治安が悪くなるのは良くないって所長が言うから協力は惜しんでないんだぞ!」
「本当に有難うございます……」
成程、ノエル君はその酒見事務所の所長を慕っている、と。まぁ人数少ないって言ってたもんね、多分その所長のカリスマは高いんだと思うよ。というか高くなきゃやってらんなさそう。
大雅には割合フラットに接しているノエル君。知り合いだったらしい入江君に対してはちょっと甘かったというか、若干丁寧に接しているような気配はあったけど。基本的には鏡のように相手の反応と同じだけの感情を返す子だから、どうにも入江君に対しての反応は意外だった。どういう関係性だろうな、レン君のことを知ってたっていうのも気になるし。
「依頼で……と言っていましたが、具体的にどの辺りを調査するおつもりですか?」
「怪異の分布具合と、ちょっとした事情聴取だな!基本的には調査してる職員と一緒に行動しようと思ってるぞ!」
あの人見知りが激しいワカバ君が懐くほどの手腕があれば確かに情報は集まりやすそう。リアムもアランもそういう情報収集は下手だからね、重戦闘区域で一番交渉上手いの誰かなぁ……ジャック以外だと全滅じゃない?
「てことは情報収集はアラン、内部での捜査はリアムについて、ってことになるのかな」
「そうなるのか?」
「多分そうなりますよね。流石に職員ではない方が単独行動することは認められないような気がしますし……」
「万が一怪異とか普通に仕留められたら職員の役割がなくなるからね」
「そんなことはないと思うけどな」
「警備隊でも似たような理由で嫌がる方々は多かったですね」
「仮に俺が怪異とかを倒せても、それは本職じゃないからあんまり関係はないと思うんだぞ」
「それはそう」
それに関しては本当にそう。仮に強い相手を倒したとしてもそれが相性的な問題なのか実力なのかっていうのは判別が難しい。アランとかリアムは割と例外だとしても、相性的に得意不得意っていうのはあるし、一度の戦闘で全部見ようってのは難しいよ。
「俺明日はアランさんの方についてくけど、大雅もちゃんと怪我治すんだぞ!」
「あ、はい。……とはいっても、特段怪我はないんですけど……」
「だからってお医者さんの許可が下りてない状況で動こうとしたら駄目だからな!」
「流石にそんなことはしませんよ……」
なんだかノエル君保護者みたいだね。俺含めて目に見える怪我がなかったら動こうとするからなぁ、大雅の反応もノエル君のお怒りもちょっと新鮮だぁ。
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