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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第四章 あの日、伸ばせなかった手を
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第三話 深層からの使者

「なぁお」

「……猫?」

 真っ黒だったからイデアかと思ったら本当の黒猫だった。……いや何でこんなところに猫がいるんだ。イデアが興味津々といった風に近付いて行って猫からパンチを貰っている。……何をしたかったんだイデアは。

 野良猫にしては毛並みが整っているような。初対面の人間相手に警戒している様子はないが、今は距離があるから何とも言えない。空を重ねたような透明感のある青い瞳はじぃっと俺達を見つめている。

「スミレ、猫がいる」

「(じー)」

「んなぁ?」

 じっと見てはいるが……この反応は興味があるという認識でいいのだろうか。猫の方もするすると近付いてくると足元からじっとスミレのことを見つめている。

「お前どこから来たんだ……?」

「んー?」

素知らぬ顔で首を傾ける猫。イデアも一緒に身体を傾げているが、お前に関しては本当に何がしたいのか分からない。スミレがぺしぺしと腕を叩いてきたので大人しくしゃがむ。

 いきなり触るかと思いきや、意外にもスミレは目を合わせたまま動かなかった。猫の方も何か思うところがあるのかじっとスミレと目を合わせて、そうしてからゆっくり耳を倒す。そうしてから存外に丁寧な手つきで何度か頭を撫でれば、猫はごろごろと喉を鳴らした。

「みー」

「わっ」

「……」

 一頻り撫でられて満足したのか、猫は一声鳴いてから急に俺の肩に飛び乗る。スミレは一瞬眉を上げたがそれ以上の反応は見せず、肩上でくるりと丸くなれば黒猫かイデアか判別がつかなくなる。あろうことかスミレがイデアを縮めてポケットに入れてしまったので、遠目からだと普段通りだろう。

「何がしたいんだお前……」

「……(ふんす)」

満足そうな表情を浮かべるスミレ。本当にイデアかと錯覚するかのように丸くなって目を閉じている猫、収納されたイデア。……当人達がそれでいいなら別に口を出すつもりはないが、それはそれとして新手のドッキリでも計画しているんだろうか、多分アランさんも東雲も良いリアクションは期待出来ないと思うぞ。

「あ、皇さん」

「東雲」

「ちょおー!」

 ぶんぶんと手を振って存在をアピールするとあ。スミレは眠そうにもぞもぞと顔を背けてしまった。近付いてきた東雲は肩口にいる猫に関しては特段指摘せず、そのまま用件を口に出す。

「アランさんが次の任務について話がある、と」

「分かった。すぐ行く」

どうやら東雲は用件を済ませてから合流するらしいので、俺は取り敢えず話を聞きに行ってから猫について考えようと歩を進める。……大人しいと本当にイデアだと勘違いしそうになるな、本物のイデアは俺のポケットの中でもぞもぞとひっきりなしに動いているけど。やっぱり出たいのか?

「スミレ、イデアが暴れてるんだが」

「?」

きょとんとした表情のスミレに呆れて意識が逸れたのが駄目だったんだろうか。


「っ」

「んぁお」

「……!」

 何の変哲もない扉の向こうからノイズ混じりの音が響く。一瞬にして変わった空気に思わず警戒するも何故か踏み込んでしまった。

 明るい廊下から暗い部屋へ。目に悪そうな明かりにスミレが少しだけ目を細めて、猫は一声鳴いてからとん、と地面へと降り立つ。

「案内ご苦労」

「なぁん」


「さて、手短に行こうか。皇志葉」

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