第二話 そこで、貴方と出会ったのです
「ぴょー?」
「なん?」
ルコンさんの生息域……と呼ばれる、大きなプールがある場所で、プールサイドをてちてちと走り回りながらルコンさんを探すうぱーくん。レンもプールを覗き込んで首を傾げているけれど……俺からみてもルコンさんの気配はない。
「ルコンさん……いないみたいだね」
「ぴょお?」
「んな?」
「あれ、入江じゃねえか。今日はルコンいねぇぞ?」
「ぷぁ!」
「なんな!」
後ろから声を掛けられて振り返る。ひょいと顔を覗かせた雪代さんが近付いてきたことでうぱーくんとレンから歓喜の声が上がった。
「おはようございます雪代さん」
「おうおはよう。うぱーとレンもおはよう」
「うぴょ!」
「ななな!」
雪代さんに撫でられて二人がふにゃふにゃと笑う。可愛いな……と思ってたら何故か俺も撫でられた。
「雪代さん?」
「え、違った?」
どうやら視線を羨んでいると認識したらしい……雪代さんの手は思っていたよりも優しくて、嫌という訳でもなかったので言葉が萎む。結局たっぷりと撫でられてしまった。
「あの……それで、ルコンさんがいないとは……?」
「最近大人しくしてたからな。ちょっと外に行ってる」
「ぴ!」
「外?」
「おう。よくあることだぞ」
……よくあっていいことなのだろうか。まぁ外に出てはいけないということはないだろうけれど。純粋に重戦闘区域で外に出るのはアランさんとあやめさんだと聞いていたからかもしれない。
「ぴゃー!」
「おーあんまり遠く行くなよー」
「ぴ!」
ぱしゃぱしゃとプールに飛び込んで遊ぶうぱーくん。レンには流石に深すぎるから近くにあった桶に水を張る。あまり水遊びをしたことがない故に水面を叩いてるけど、楽しいんだろうか。
「そういや、お前一般区画出身だっけ。どの辺?」
「東……じゃなかった、西のはずです」
「西……西なぁ、あんま詳しくないけど、確かウロは西出身なんだよな」
「なん?」
「俺は東出身」
ざっくりとした分類だが、ヒュリスティック本部であるセントラルを中央として一般区画は東西南北に分けられている。その中でも苛烈な北、不可侵の東、平常の西、平穏の南といった風に認識されており、西と南は特に治安が良い。
「重戦闘区域にいるやつの殆どは北出身だからな。西っつーのも珍しい」
「職員になる人物では西が一番多い筈では?」
「それはそう。だって南はそもそも志願率低すぎるし、北と東は人が少なすぎる」
「なん」
南が平穏すぎるが故に戦闘技能が育たないことは少し聞いていた。東には妖精の森があり、人が住める区域は北東の極一部だけとも。北からの人員が少ないのは純粋にあそこは一般区域とは名ばかりの戦場であるが故だろう。
「じゃあ雪代さん、妖精の森を見たことあるんですね」
「森……まぁ、あるな」
「なんな」
「どんな場所なんですか?」
「どんな……」
んー?と、言葉を選ぶ様に空を仰ぐ雪代さん。真似するようにレンも首を傾げながら雪代さんを見上げている。転がらないように手を添えれば、タイミング良くレンが手の中に転がり込んできた。
「なんつーか、でかい」
「でかい」
「おう。想定の倍くらいのスケールがある」
でかい、とは何を指しているのだろう。どこか遠い目をする雪代さんに詳細を聞こうかと思ったが、その前にうぱーくんが帰ってきてしまい有耶無耶になってしまった。
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