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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
序章 幻想を追い、現実を歩む
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黒くて黒い

 一撃で仕留められるならそれでいい。駄目なら二手、三手目くらいまで考慮をした攻撃を。双方の手札の管理、情報とリソースの残量を正確に把握すること。相手を理解し、自分を管理してそうして初めて作戦は機能する。何度も復唱したそれを念じて、また前を向いた。

 使うのは双剣、刃渡りはそれほど長くないので必然的にヒットアンドアウェイで戦う事となるが……使い慣れている武器種だ、そう遅れはとらない。

「おっ双剣……良いねぇロマンがある。入江くんは斧かい?それもまたロマンだね!」

「なんな!」

 俺も入江も一撃型だ。とはいえ、俺が速さと鋭さで翻弄するタイプなのに対し入江は速さと正確性で仕留めるタイプである。似ているようで全然違う。

「んー……俺個人としては実力的にも申し分ないし重戦闘区域配属にしてもいいとは思うが……」

「?」

「アランがなんて言うかねぇ?あとスミレくん、その黒いのやっぱ生物(ナマモノ)なの?」

三人しかいないらしい重戦闘区域の職員。アランさんも「恐らく重戦闘区域に配属になる」とは言っていた。遣霊がいることを加味すると言っていたので、やはりアランさんも重戦闘区域の職員なんだろうか。

「あの。……ルコンさんは、重戦闘区域の職員なんですか?」

「ん?俺は違うぜ?」

 違うのか。俺が把握してるのは重戦闘区域に悪魔?がいるというのと職員は三人しかいないということだけ。加えて遣霊がいると重戦闘区域に配属されやすい……のだろうか、この辺りは良く分からない。

「キタヨー」

「あ、うぇーいおつおっつー」

 ルコンさんが親し気に手を上げて迎え入れたのは、ちょこんとした幼げな少年……青年?だった。ふわふわとしたスカートと大きなとんがり帽子も相まって少女性が強めにも見えるが。

「紹介しよう!この子はワカバくん。俺のおともだち~」

「ヨロシクナー」

「入江綾華(りょうか)です。こっちはレン」

「皇志葉(しよう)、です。こいつはスミレ」

「んなん!」

「早速だけどワカバくん、ちょっとスミレくんが持ってる謎物質なんだか分かるかな?」

「ココロエタ」

 ワカバさんがすっとスミレと視線の高さを合わせる。相変わらず黒い塊は動いているが……ワカバさんがおもむろに手で触れると、捏ねるように塊をもしゃもしゃし始めた。たまにやりすぎてスミレももしゃられている。

「いや撫でまわすんじゃなくってぇ……」

「デキタ」

「え、出来た?」

「(コクコク)」

 スミレとワカバさんが心なしか自慢げに黒い塊だったものを掲げる。さっきまで黒くてちょっと動く謎の塊だったそれは、とんがった部分が二か所と、だらんと紐のように垂れる部分が五か所……多分、犬か猫辺りの姿を模していた。

「おー!……それ何?」

「イデア」

「いや名前もそうだけど……まぁいっか。イデアくんはスミレくんの……ええとこの場合って何になるの?固有の能力でおけ?」

「チガウネ」

「ちがうんかーい」

スミレがわしゃわしゃとこっちに寄ってくると、どうだと言わんばかりにイデアと呼ばれる塊だったものを見せつけてくる。……猫じゃないな多分、よくよく見れば黒い目もあるし(くち)……口…………?とにかく、生物の様相は一応呈している。試しに撫でようと伸ばした腕は、特に何かにぶつかることなく埋もれていったが。前言撤回多分コイツ生物ではない。

「ワカバくんとしてはどぉ?重戦闘区域配属になると思う?」

「ナルダロウナ」

「そうだよねぇ。どうしよ、思ったより早く終わっちゃったぞう!」

 勝手によじ登ろうとしてくるスミレを抱え上げる。イデアの方はもごもごと数回動いてからぼて、と地面に落ちた。そのままナメクジのような挙動で周囲を探索している。その四足は飾りか。

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