第十四話 本能のままに、躊躇うことなく狂気を晒せ
微塵の躊躇いもなく弱点を狙いに来たかと思えば、すぐさま二撃目のために飛び退く理性もある。緩急のやりとりは全体的に高速だ、油断すればペースを乱されて全てが後手に回りかねない。
こちらから先手を打つのは愚策だ、かといって受けに回っていては倒せないだろう。リズムに合わせることは出来ても、先の手を取るには少し手綱を握られ過ぎている。
「くっ……!」
力で勝れど速さで捻じ込んでくるのだから油断ならない。こちらが差し込んだ一撃で裏に回る、そのままの勢いで首に迫る刃があったから天波羽織を起動した。
「天波羽織……!」
イメージは鎧のように。用途が防御に限られるのなら戦闘中でもどうにか使いこなせる。だが今の一瞬で入江さんの着けているスカーフも同じことが出来るという指針が出来た、更に戦いは加速する。
「っ」
「はっ……!」
致命は天波羽織で防ぎ、それ以外は相殺という形で切り結ぶ。一手を損なえば首が飛ぶ、手を間違えれば天秤が傾く。如何に相手の余裕を切り崩せるかの勝負だ、ここで負けては守護者の名が廃るというもの。
「(確実に一撃……!)」
”守護者”と呼ばれる特性を起動して無理矢理一手先を取る。最速で最高の一手を、狙うのは急所ではなく機動の要。刀を振れば対処される、捨て置くように手を離し――――身軽になった手で、脚を握り潰した。
「っ……あ゛ぁ゛!!!」
「っ!!?」
一瞬痛みに動きが鈍ったが、入江さんは止まることなく斧を振るい右腕を切り落とす。痛みで止まるほど繊細な感性はない、だが、攻撃手段を狭められたのは痛手だった。
「潔さは評価します、が……!」
「なっめんな……!挑戦者はそっちだ!」
不敵な笑みを浮かべ、無謀にも更に加速していく。本来なら存在するはずの生存本能というものがまるでない、目の前にいる獲物が活動を停止させるまで止まるという選択肢はないとでもいうような。
持ち替えて迎撃、火力は落ちたがまだ戦える。入江さんも一切の負傷などないという風に立ち回りを続行。……実力を判断する段階など疾うに過ぎた、だからここからはもう意地の張り合いだ。
「はーいそ・こ・ま・で」
強制的に意識をずらされて武器を取り落とす。入江さんの方も同じような反応を示したが、右足が潰れていたため上手く立てずルコンさんに支えられていた。
「もー二人揃って心配になる勢いで手合わせ続行するんだもの。いくら損傷しても問題ないとはいえ、やりすぎだからね?」
「損傷……あ!禅譲腕は!?」
「大雅です。そこに落ちてますよ、腕」
「ほい腕。空間解除するからつけといてね?」
「はい」
あくまでも仮想空間、どれだけ怪我をしても空間を解除してしまえば全て元に戻る。断絶していた感覚を取り戻す様に何度か動作を確認していれば、無事と判断したのか入江さんがほっと息を吐いた。
「足の方は大丈夫ですか?」
「あ、はい。問題ないです」
双方支障がないことを確認してから、反省会も兼ねて一旦観戦席の方へと足を運んだ。
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




