第十三話 正しい認知
「斧……となると、立ち回りも独特なのでは?」
「いえ……速さで撹乱して急所に当てる、ただそれだけです」
禅譲のいう”監視”のため、俺の戦闘スタイルを見せることとちょっとした手合わせを。観客は遣霊達とソウさん、それとルコンさんだ。リアムさんは何か用事があるらしく不在、代わりにうぱーくんはルコンさんの膝上できゃっきゃと楽しそうに観戦している。
くるくると手首で回せるくらいにはこの斧は軽い。正確には重量を自在に変えることが出来るので、機動力が落ちないのがとてもありがたい。今は直せる人がいないので、壊れたら困ることだけがネックだけれど。
「失礼ですが入江さん、幽撃、重撃の熟練度は?」
「実は……多重撃は得意なんですけど、幽撃は重ねられなくて」
正直、幽撃の方も精度としては怪しいものだ。安定性がなく、成功率も高くない。ただでさえ幽撃は訓練が困難だというのに、コツすら掴めていないせいでまともな訓練が出来た試しもない。
「幽撃は……結構センスを問われますよね」
「そうですね……手軽に訓練出来るものでもありませんし」
意外にも共感が得られて思わず深く頷いた。騒動を鑑みるに皇は幽撃を自在に繰り出せるんだろう、……やはり強いな、と思う。
禅譲が携えているのは何の変哲もない刀。少し短いだろうか、いやこれは多分刃渡りじゃなく刀身が厚い。あの重厚な刀身を折るのは中々厳しいものがあるだろう、体つきからして力押しで勝てる相手ではない、つくづく筋肉のつかないこの身が恨まれる。
「……案外、入江さんが師事すべきはソウさんなのかもしれませんが」
「え、ソウさん?」
意外な名前に思わず聞き返してしまった。ふわふわにこにこ、穏やかな表情と無邪気な行動で癒しを振り撒いているソウさんを師事すべき……というのは、ソウさんの実力が高いということになる。……雪代さんやワカバさんなどの評価を聞く限りあながち間違いでもないのだろうが、戦闘スタイルは魔術師寄りだろうと勝手に思っていた。
「ソウさんの実力は……」
「……まぁ、少なくとも私では遠く及ばない、とだけ」
禅譲だって警備隊の中では相応の実力者のはずだ。その禅譲すら遠く及ばないとなると本来ならば守られる人ではないような気もしてくる。恐らく研究部門からの干渉がなければ職員として働いていた可能性も高いだろう……ちらりと視線を向ければ嬉しそうに手を振ってくれる。
「本来ならば任務中に実力を確認するべきでしょうが……リアムさんから怪異では相手にならないと聞いています。報告するかは別として私としても正当な実力は見ておきたいので、全力でどうぞ」
「はい。そちらも手加減はなしで」
「当然」
世界視、観測手共に起動。自然体ながら隙のない構えで立っている禅譲へと、一歩。
「っ」
「!」
刹那、音を置き去りにして双方が衝突した。




