第十一話 背を押す言葉すら
「調子どう?順調?」
「シンさん。……もしかして、大雅の方に一枚噛んでます?」
「ふふ」
俺の問いかけに笑みで答えとするシンさん。いつだって表情に笑みを乗せていることが多い人だけど、今のは多分悪戯が成功して嬉しい時のような、そんな無邪気さが感じ取れた。
「ぷー!」
「お、うぱーくんも元気だねぇ。今日はリアムと一緒にいたい日なのかな?」
「ぴゃん!」
「え、お邪魔?ごめんねぇお話したらすぐ退散するから」
「構いませんよ」
「うぴょ!」
別にうぱーだって二人きりが良いわけではないだろう。俺はともかくとして、うぱーは沢山人がいる方が楽しそうな気配がある。走り回りたいんだろうかと思い地面に降ろせば、不思議そうな顔をして膝上によじ登ってきた。
「ぴゅい」
「あ、うぱーくんにも聞かせられる内容だから大丈夫だよ?」
「そういう意図じゃなかったんですけど……」
「???じゃあ取り敢えず話続けるね」
意図は伝わらなかったが問題なしと断じて会話が続く。シンさんが言うには近々鍛錬と評して一度実力を周知させる必要があるだろう……とのことだった。
「ほら、大雅くんの実力はそれなりに認められてるだろうけど……新人の中には信じてない奴とかいそうだし、入江くんに至っては多分警備の実績すらまともに認識されてないよ?だから先手を打ってね」
「先手で……」
「うん。必要なら自称実力者とかとやり合っても良い。途中で戻されるとかあんまりすぎるじゃん」
一年間一緒にいられると思っているのに途中でいなくなったとなれば、間違いなくソウが暴れる。大切に匿われているから誤解されることもあるが、あれでいてソウの実力はいっそ異常なほどに高い。
「そうですね。出来るだけ早く行いましょう。……兄さん達も呼ぶべきですか?」
「んー……皇くんはなんだかんだいって東雲くんの件で結構強さが周知されてるからね……知ってる?今皇くんって”アランの剣”として認識されてる」
「え」
なんだそれは。思わず固まった私の頬をふにふにと弄ぶうぱー。おい口に飴玉を入れるのはよせ。
「うぷい」
「おっとその様子だとやっぱ知らなかったみたいね?」
「し、ってたら、先に抗議してます」
「わぁ強火」
「強火にもなるでしょう……!俺ですら兄さんの右腕とすら認識されてないのに……!!」
「ぴょあー!」
「ああうぱーくんおくちから飴玉が零れちゃうよ」
「ぴょむ」
両手で口を抑えて大人しくなったうぱーと、未だ混乱が覚めない俺。おかしい、兄さんは確かに中、軽戦闘区域ではやや舐められていることは理解しているが、何故そこから皇が剣だなんていう評価になるんだ。あの騒動では兄さんだって戦ってただろうに。
「アランとしては表立って動く訳にはいかないからねぇ。矢面に立たせたいわけじゃないだろうけど、部下だから許される振る舞いってあるじゃない?」
「……それは結局上司である兄さんの責任になるのでは?」
「そうかもね。でも――――重戦闘区域には、俺達がいるから」
嫌なこと、辛いこと、悲しいこと。どんな理不尽でもいいから聞かせてほしい、預けてほしいと散々言われ続けたその最果て。個でなく上に責を問うなら、そのときは容赦しないとでもいうように笑う。
「ですが、それは……」
「どうして今更、そう思うのも無理はないと思う。でも、君達を傷付けてしまったあの日から……俺達は、今度こそ守るって、決めてたんだ」
今度こそ。そう言われて急に思考が冷静になる。苦しみを乗り越えることが未だ出来ない俺にとってはその祈りすら苦痛だった。
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




