貴方が、まだ歩けるように
「君達は遣霊がなんたるかってのはご存知かい?」
「強者のもとに現れる……人語を話さない精霊のような存在、と聞いてます」
「うんうん大体そんな認識されてるね。もうちょっと詳しく言うと、この子達は君達の心を守るために現れる……ストッパーみたいな役割も持ってるんだよね。だから君達を守るためにちょっと不思議な力も持ってたりする。個人差はあるけどネ」
「なん?」
こて、と首を傾げるレンを撫でる。俺の心を守るための存在、その発言に思い当たる節があった。レンと出会った理由も同時に理解して、今更自分があの日どれだけ絶望してたのかを知る。
「それで、君達の心を守る遣霊達はね……実はあんまり君達と離れらんないんだ。とはいえ抱えたまんま戦うのも厳しいでしょ?だから訓練して少しずつ一人で動ける範囲を広げとかないといけない」
「成る程……」
「……あの、ルコンさん。つまりこいつが意地でも離れようとしないのって……」
「そう!本能!!」
皇さんが両腕を使ってどうにかスミレくんを引き離そうとしているが、スミレくんもまた短い両腕をしっかり伸ばしてしがみついている。俺も試しにレンをそっと地面に下ろしてみれば、きょとんとした表情のあと手にぎゅっと抱き着いてきた。
「レン」
「んなん」
「お留守番、出来る?」
「んーん」
「戦闘中は危ないから。ね?」
「んんん!」
困った、普段は聞き分けがよく、視界の範囲なら自由に動き回る子なのだが。皇さんは依然としてスミレくんを引き離そうとしているが、今のところ打開案がなく困っているようである。
「あはは、そうだよねぇ最初なんてそんなもんそんなもん!みうくんも結構べったりだったんだぜ?今は説明に納得したのか大人しく待つようになってくれたけど」
説明。まさかとは思うが、アランさんはみうくん相手に戦闘区域についてや怪異について話したのだろうか。アランさんは遣霊を子供扱いすらしない可能性が出てきた。そう考えている間に皇さんは何かに納得、すとんと地面に座り込んでスミレくんと向かい合う。
「……スミレ。俺は試験を受けたい」
「……」
「俺の実力不足で軽戦闘区域や中戦闘区域に落とされるのは構わない。だが、俺は強くなって重戦闘区域に……辿り着かないといけない理由がある。自分の足で、自分の実力で」
「…………」
見つめ合うこと数秒。ふ、と穏やかに瞳が伏せられて手が離された。それを見たレンにも思うところがあったのか、俺を少し見つめてからそっと手を離す。
「なん……」
「……レン。大丈夫だよ。俺も、強くならないといけない理由があるから」
「んなんな……」
「レンが信じてくれる限り俺は負けないから」
「だんなな!」
レンが力強く頷いてくれる。その信頼が嬉しかった。労わるようにもちもちとスキンシップを取っていれば、隣から困惑の声。
「うぉっ」
「え?」
「……(フンス)」
スミレくんが、何か黒い塊を持って……動いてないだろうか、あの塊。皇さんどころかルコンさんまで困惑してるんだが。
「ちょちょちょ、ちょーっと待ってね……いやホントにちょっと待って…………いやぁこれどうしようね?っていうかその黒いのなぁに?魔術組呼んでいい?」
「……取り敢えず、大人しいうちに試験だけ受けたいんですけど…………」
「え、これスルー出来るの?凄いね君……まぁでも試験するのは賛成だぜ、試験実施してる間に魔術組の誰か来れないか打診してみよっかぁ……」
ルコンさんが半ば諦め気味に笑っている間にも黒い塊は僅かに動き続けており……何とはなしに見ていた俺と、目が合った。……生き物なのか?
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