第六十三話 決戦・出現
「っ入江!?」
宇月の悲鳴に近い大声に思わず手を止めた。ここにいる怪異に負けるほど入江は弱くない、だから何かあったんだとしたらそれ以外……だと、思ったんだけど。
「……え?」
俺がいたのは東雲……透の近くだった。丁度東雲の方に背中を向けていて、視線も手元だったから気付けなかった。……いやあの大きさなら普通気付くだろ、何だあの赤黒い塊は。
一見するとひっくり返したお椀型の……赤黒い肉の塊?ああそうだ、若干溶けたスライムみたいな……液体が滴ったりはしてないけど、若干ぶよぶよとしているのが分かる。かなりデカいな、空間拡張したのに天井スレスレなんだけど。
「何あれ……?」
「青藍さん!入江が!」
「入江に何が……って入江は?」
「呑み込まれました!」
「は!?」
あの怪異かどうかすら怪しい塊に??月野の言葉を疑ってるわけじゃないけど、あいつ口どころか顔も腕も足もないよ??
「まずそいつ何!?」
「────!」
俺の言葉に反応するように東雲透が音を発する。相変わらず何を言ってるのかさっぱり分かんないな、ただ宇月がハッとしたように東雲透と謎の肉塊を交互にみやる。もしかして聞き取れてたりするのかな、月野に何か囁いてたし。
「生贄を捧げる台座……!?」
「台座が動くんじゃねえよ……!」
そもそも台座が自我を持つな。色味もサイズも形もなにもかもがおかしいだろ。あと入江は呑み込まれたらしいのに東雲が無事なのはおかしい。
入江がいなくなると純粋に人手が不足する。ただでさえ黒い触手みたいな腕にてこずってるってのに、台座まで相手する余裕なんてない。月野は集団戦の方が得意だし、宇月は戦えないし。
「つか、呑み込むってことは触れたらアウトか……?」
そうなると対抗手段がないというか、それこそアラン呼ぶくらいしか方法がなくなるんだけど。もしくは内部から破壊するか、その場合はもう入江に頑張ってもらうしかない。あの一瞬で戦闘不能にはなってないと思いたいんだけど。
「なんでわざわざ入江だけを呑み込んだ?あれに防衛機構も組み込まれてんのか……?」
今は動いてないけどアレがどれだけのスペックを秘めているかで話が変わってくる。ついでに思考回路がどうなってるかでも。仮に宇月と月野を優先的に狙うとしたら性格が悪すぎる。
「月野!お前この黒い触手もどきどうにか出来る?」
「やってみますけどっ……!あ、宇月がどうにか出来そうです!」
「おっけー。じゃあそっちは二人に任せた」
俺はどうにかしてこの台座を仕留める必要がある。まずは……入江を引っ張り出すところからかな。
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