第八話 公然の沈黙
「”いない”とされている存在について、こちらから出来ることはないぞ」
「ないんですか」
「ああ。双方にとってつつかれるのは都合が悪い」
曰く、職員としてカウントされていない存在……それこそシンさんやルコンさんは、基本的に警備隊側から何か指摘されることはない。勿論存在は認知されているしシンさんは今まで今俺がついているソウさんの警護についていたのだが……警備隊の刺客を黙認する代わりにシンさん達のことも黙認させているのだという。
「いない以上、殺されても文句は言えない。怪我を負っても表向きは何も言えないんだ、一方的にこちらが有利と言われても仕方がないレベルの取り決めだったが……そうか、透明化」
「素人……というには、気配の消し方に慣れがありましたけど、イレギュラーに対する反応は稚拙でした」
首筋にナイフ突き付けられたくらいで動揺するのはあまりにもお粗末すぎる。逃げるときの足音もそうだが、失敗を想定していないのかと言いたくなるレベルだった。
リアムさんは俺の言葉に相槌を一つ。真似するようにうぱーくんもぴょむ、と謎の言葉。レンは俺の手の中でふむふむと頷いている。
「舐められていたのだろうな」
「なん!?」
「ぴょお!」
「新人……だからですかね」
「それもひとつだろうが……道具を過信していたんだろう」
「あぁ……」
確かに、透明状態且つ無音で行動していればまず見付かることはないだろう。視覚よりも気配で存在を判断する人達が多いので麻痺していたが、視覚と聴覚は索敵の上で重要な要素だ。
「一度見破られているとはいえ、確実に偶然だと主張する者はいるだろう。……出来るか?」
リアムさんが言いたいのは、まだ透明化による襲撃は起こるだろうという警告だ。観測手はまだ完全に使いこなせているとは言い難い熟練度ではあるが、特性である世界視ならば常時展開していても然程影響は無い。
「はい。気配察知はそこまで得意じゃないですけど……見破ることは得意なので」
「なん!」
堂々と胸を張るレン。俺の言葉を肯定してくれているようで頬が緩む。真似をするように元気よく片手を上げたうぱーくんを丁寧に元に戻しながらリアムさんも頷く。
「残り二日、何事もなく終わるとは思えないからな。警戒は怠るなよ」
「はい」
「うぴ!」
「お前は大人しくしてろよ」
「うぴょ!?」
さも心外ですと言わんばかりに口を開けるうぱーくん……その口にリアムさんがキャラメルを放り込めばおいしさにとろけてるけど。
「生死は問わない……といったが、出来るだけ生かしておいた方がいいぞ。勿論、無理にとは言わないが」
「ああ……分かりました。俺としても必要以上に命を奪うのは……ちょっと……」
別に真っ当な倫理観を持ち合わせているとは思っていないが、処理が面倒なのはいただけない。見せしめという方法もあるが、ソウさんだって自室の前でそんなことされるのは嫌だろう。
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