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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第三章 己が目的のために、嘘偽りなく盾となる
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第五話 ”がい”となるもの

「一応、表向きは入江さんの監視についていますので、外ではそのように振る舞います」

「監視……分かりました。とはいえ、三日間はここの警備なので、問題ありませんよ」

 俺がソウさんの扉を守っている限り、禅譲がこの付近で見掛けられても何ら不自然ではない。恐らく出入りの瞬間さえ見られなければ問題ないだろう。親しくしていれば不正を疑われるが、程々の距離感を保つという名目があれば、姿が見えない時があろうとも報告ととられる。

「……」

「ソウさん?」

「大雅が、個人の監視につくのは珍しい、よね?」

「まぁ……そうですね。私も最初は罠かと思いましたが……」

禅譲の言葉の途中で、何か気配を察知する。レンをソウさんに預け部屋から廊下へ。禅譲の同伴は断った、見られても構わないが共にいることは恐らくよく思われない。


 誰もいない、違和感はない。特性を起動し周囲を見やる。あらゆる物質の情報を読み取ることが出来る眼、”世界視”を介せば一気に視界が情報で埋まる。

 今壁や天井の情報は必要ない。大部分の情報は一度思考から追い出して、差異がある部分だけを抽出する。見えないけれど映る情報、輪郭を炙り出し一拍、不埒者へとナイフを突き付けた。

「っ……!?」

「どこへ行くんですか?迷子ですか?」

 不意を突かれた不審者だがギリギリ沈黙を貫いた。だが息を飲む音までは消せず、確信を持って向けられた言葉への困惑も隠せない。虚空を雫が一滴伝う。

 切っ先を逸らし布一枚巻き込んでそのまま壁に。反転したその勢いで向かいの壁際を通り抜けようとした不埒者を蹴り飛ばす。

「逸れましたか?道案内が必要で?」

 逃げ出そうとする相手を縫い止める。”人”の情報は取れないが、身に纏う服、構えた武器、使っている道具の情報は射程範囲内だ。相手が警備隊の者ではないことも、使われた道具は警備隊から渡されていることも分かっている。

重戦闘区域(ここ)での問題は、職員の管轄ですね。リアムさんを呼びましょうか」

 袋小路、扉を開ければ気付かれる。流石にどう逃げるべきかはまだ考える頭があったらしい、ナイフを抜くのではなく服を破ることで拘束から抜け出した二人の不審者は、足音を鳴らしながらすごすごと逃げ帰って行った。

「……ふぅ」

完全に音がしなくなり、視界からもたらされる情報が完全に消えてから息を吐く。捕縛しても良かったが、警告で済むのならそれに越したことはない。恐らく相手は警備隊が雇った外部の者の様だったので、捕縛しても尻尾切りされる可能性が捨てきれなかった。

 警備員ならば衆目があるところで突き出せばいい、別所轄の職員ならばリアムさんに個人的に突き出せば問題ない。……だが、それ以外を対処する方法というのは生憎存在しない。そもそもこの重戦闘区域に外部の存在が現れること自体がまずないからだ。

「……報告は上げないとな」

 ただの警備で終われればいいのだが。

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