表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第三章 己が目的のために、嘘偽りなく盾となる
60/573

第一話 最奥で微笑むもの

「はじめまして」

 重戦闘区域の中でも一際閉じられた奥の奥。誰からも隠す様に配置された部屋の中。まるで深窓の令嬢がいるかのような空間に、その人はいた。

「おれはソウ。……よろしくね?」

 その瞬間を、俺は生涯忘れないだろう。



「兄さん……アランは重戦闘区域の職員であるのと同時に現場全ての指揮権限を持っている。”現場最高権力”というのはあながち間違いではないということだな。とはいえ……相当な事態が発生しない限りは現場にいる責任者が指揮を執る。アランは呼ばれることも多いが大抵は当人が自ら動くことで事態を収束させるのであまり指揮を執ることはない」

 コツン、コツンと足音が響く。周囲を忙しなく見回るレンの様子からもこの辺りには来たことがない様子が知れて、けれどうぱーくんが元気よく走りだしたのをリアムさんが止めないことで危険な場所ではないことも知れる。

「あやめは上層部以外にその存在を知られていない。その代わり……と言っては語弊があるが、あらゆる場所に潜入し、監査をすることを認められている。あやめは元暗殺者でな、色々あってここに来たから戦闘スタイルも少し変わっているんだ」

「暗殺者……」

「ああ。あやめは怪異よりも人を殺す方が、余程」

監査、と言葉を濁したが恐らくは粛清も兼ねているのだろう。表向きの恐怖をアランさんが司り、その裏であやめさんが動く。……重戦闘区域の職員は三人しかいないのに、うち二人が別の場所での仕事まで担っているとは。じゃあ実質的に重戦闘区域に常駐しているのはリアムさんだけだったのか。

「それを踏まえたうえで、私の主な仕事は重戦闘区域の中立性を保つこと。侵入を許さず、崩壊を許さず、強者として()()ことを求められている。……故に、重戦闘区域(ここ)は職員だけではなく守るべきものもまた同時に存在する」

 先導していた足が止まる。ノックをしてから入室した部屋の中には、……儚さを体現したかのような美の化身がいた。


「入江……綾華です。初めまして」

「ぴょ!」

「だんな!」

「この子はレン。俺の遣霊です」

「わぁ……!小さいね、ふふ、初めまして?」

「なん!」

 くすくすと微笑むソウさんは、柔らかな気配と周囲を浄化するような清廉さを纏っている。外を知らぬかのような白い肌に、何色をも返す最上級のシルクのような銀糸。どこを見ても完璧、どこをとっても美しいとしか言えない。

「しゅー!」

「あ、すももくん」

「すもも、おはよう」

「しゅ!」

勢いよく走ってきたすももくんはソウさんにぶつかる寸前で急ブレーキ、壊れ物を触るかのような繊細な手つきでソウさんへと触れる。すももくんは確かあやめさんの弟さんの遣霊と言っていた。このやり取りを見るに……ソウさんはあやめさんの弟、という認識で良いのだろうか。

「あの、リアムさん……」

「今はその認識で良い。あとで詳しく話す」

「あ、はい」

 すももくんはこちらを見て少しだけ腕を浮かせたけど、威嚇音は出さない。ソウさんの隣にちょこんと座ってうぱーくんとレンのことを見守ってる。掌に導かれたレンは無邪気にソウさんへと手を伸ばし、ソウさんも声を弾ませてレンとの交流を享受している。

「しゅ!しゅー!」

「なんな!なんなな?」

「しゅん!」

「ななな!」

「ぴょ?」

三人揃って元気だな。レンが違和感なくソウさん達との輪に溶け込めているのを認めたリアムさんは、一言、ソウさんに断りを入れてから俺を隣室へと誘った。

面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ