第二十話 実のない話・後編
「大雅だけで来ると思われてると思うか?」
「どうでしょうね……流石に誰かしらは同伴する読みであったと思いますが」
「じゃあその場合誰を想定していたのか、が気になるな」
大雅を利用したいと仮定した場合。沖名職員、あるいはその取り巻きだけで、大雅と同伴したであろう重戦闘区域職員を無力化する算段があったとみるべきだ。アラン読みだった場合、沖名職員の他に式野職員が手を組んだ可能性も考慮しなくちゃならない。
「大雅を利用する……利用っつったって、なぁ?」
「一般的なのは……監視カメラないし盗聴器を仕込む、ですかね?記憶を読む技術はない筈ですし」
「洗脳は?」
「可能性としてはありますけど気付かれる可能性が高い気がしますね」
「ま、そうだな。大抵のモンならアラン職員がどうせ気付く」
この辺りの脅威をはたして禅譲はどこまで認識しているのやら。流石に研究部門にいる職員はアランがどれくらい規格外なのかを理解……していたとしても式野職員がいたら認識が歪むな、あの執着心の塊がそんなまともに詳細を伝えるとは思えないし。
つらつらと思考を回しているときに、ふと気になることがあって口を開く。素直に答えるかどうかは賭けだったが、土岐職員は警戒すらしていないようだった。
「そういやお前、どうやって大雅が面会に来てることを知った?俺の事は認知してなかったっぽいし」
「煽られたので……」
「煽られた?」
「ええ。安芸博士に」
「安芸……ってことは沖名職員の部下か。それなら確かに情報を持っててもおかしくはない」
わざわざ煽りに来たのか、それとも別の意図があるのか……流石に会ってもいない相手を推測するのは無理があるな。ただ、少なくとも煽りが成立すると理解しているということは……まぁ、その安芸職員は土岐職員の実情を知っているということになる。知っている上でわざわざ煽った……本当にそれだけか?
「というか……何故大雅と貴方なんですか。確かに研究部門内で貴方は要注意人物としてマークされていますけど、せめて重戦闘区域の職員を同伴させるべきでは?仮にも医療部門の職員ですよね?」
「それはそう。何故かは分からんが許可が下りちまったんだよなぁ……」
同伴する場合人がいないのが難点ではあるんだが。研究部門と確執がない職員って皇くらいしかいないんじゃないだろうか。リアム職員を連れ出すことはアランが許さないだろうし。
「……まぁ、お陰で大雅が利用される前に接触が出来た上にここまで会話も出来た訳ですが。多分もう一度禅譲から面会ないし面談するように、と言われるでしょうけど断ってくださいね、どうせ碌なことにならない」
「承知の上ではあるんだけどなぁ……断った程度で引き下がるタマじゃないでしょ禅譲家」
「適当に短期間で再度面会を打診したら怪しまれるとか言っとけばいいんですよ。あっちは内情なんてこれっぽっちも知らないんですから」
一理あるな。この会話自体がかなり情報の質としては高い方だから、下手にリスクを冒す必要もないか。俺が頷けば土岐職員は満足そうに口角を上げる。
「大雅には適当に誤魔化しておいてください。代わりに私が根黒職員の詳細について探りましょうか?」
「んー……?それは流石にお前にリスクが大きすぎるだろ」
「問題ありません。どうせ拾った命なので」
「……」
……拾った命?
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