第十九話 実のない話・中編
「いや今のは言葉の綾と言いますか!」
「すげーなあの流れで失言とかあるんだ」
「感心してる場合じゃないんですけど!?」
困惑している大雅には悪いが敢えてフォローは入れず反応を伺う。出来る限り聞かなかったことにしたいようだが……俺がいるから下手な手は打てないって感じだな。
「えー…………っと、取り敢えず先程の発言は忘れてください」
「…………良いでしょう、何も聞かなかったことにします」
「ありがとうございます。それで、私達は禅譲の意向でこちらに来たんですが」
「……成程、だからこその何も知らされていないのか、ですか……」
「そちらの件はもう忘れてもらって……」
「独り言です」
「……」
大雅を揶揄う意図はない、ただ純粋に思考を回しているだけだな。やけに大雅の警戒が薄いことも気になるが……込み入った話をするにはこの場はうるさすぎる。
「俺がいるのを知ってて盗み聞きを試みるなんざ、どうも意識がたるんでると見える。警告は既にされてるんだから……」
魔術式起動、少しずらして監視を切る。俺が動き出したと認識した瞬間土岐職員は大雅に接近して意識を刈り取った。……手際が良いな、大雅だって油断していたとはいえそんな簡単に気絶するような鍛え方はしてない筈なんだが。
「良いのかよ土岐職員、大雅を利用するのがそっちの目的じゃないのか?」
「知りませんよあの家の事情とか。お察しの通り私は禅譲に関与してませんし」
「その辺周知されてねぇぞ」
「どうせそうでしょうね!」
やっぱり、想像とはちょっと違う事態になってるみたいだな。ただ大雅を眠らせた辺り誤解を解く気はなさそう……少なくとも大雅には知られたくないんだろうな、という察しはつく。
「というかシンプルに疑問なんですけど、何故禅譲から沖名さんに繋がるんだか……普通に考えて根田の方でしょう」
「関係があるんじゃねえの?」
「……禅譲で見た記憶はないんですけど」
「大雅も知らないらしいから外部の……それこそ、研究部門で懇意になったと見るべきかね」
「まぁ……責任者同士なら私の知らないところで交友を深めていてもおかしくはない、か」
……何か、俺に対してやけに警戒がないな。大雅に対してもそうだが、敵対していないとはいえちょっとおかしくないか。警戒されたり舐めた対応をとられるのは慣れてるんだが、初対面でこの対応はなんというか、調子が狂う。
「わざわざ大雅を呼び出した理由に心当たりは?」
「……貴方が同伴したのって根黒職員の代わりです?」
「近いが違う。指定はされてない」
「じゃあ単純に利用しようとしたんですかね。流石に不確定要素に戦力を割くほど余裕はない筈」
ますます訳が分からんな。
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