第十八話 実のない話・前編
「相変わらず訳分からんくらい厳重だな……」
「相変わらずということは……一度来たことが?」
「んー……いや別に。言葉の綾」
適当に言葉を濁すレンリさん。流石に研究部門内で雑談をする余裕はないのでそのまま俺も口を閉ざす。適当な空き部屋に通されてかれこれ数分が経とうとしていた。
「……遅いですね」
「そうだな。ただの嫌がらせってんなら構わんが……」
嫌がらせなら良いのか。あまり聞かないタイプの返答だったな……。普通こういう場合ってただ遅れているだけならいい、というんじゃないだろうか。
「……なんか騒がしいな」
「本当ですね、やけに――――」
「お待ちください土岐博士!」
「うん?」
思ってもみなかった言葉に俺とレンリさんは揃って顔を見合わせる。一先ず近付いてきていることだけは分かったので、姿勢だけは正しておいた。
やや乱雑に扉が開く。無理矢理突破してきたのであろう土岐博士は、息切れを整えることすらせずにこちらを一瞥してからレンリさんに詰め寄った。
「何故ここに大雅を連れて来たんですかアラン・アンシエント!警備隊から重戦闘区域に派遣されていたのは知っていますが貴方なら――――!」
「あー落ち着いてください土岐博士。俺はアラン職員じゃないです」
「は……!?」
レンリさんはひら、と手を揺らして土岐博士を宥める。やけに焦っているな土岐博士、まさかレンリさんとアランさんを見間違えるなんて。
「取り敢えず俺達は沖名職員との面会予定だったんですがね。土岐博士が代わりに面会するってんなら否はないんですが」
「ちょっとレンリさん」
「何で沖名さんの名が……いえ良いでしょう彼は現在忙しいので私が代理として面談します。貴方達は下がるように」
「で、ですが……」
「文句は後で聞きます。それと、何かあったら困るのでこの辺り一帯には人を寄せないように」
「それはどういう……?」
「”氷騎士”が来ているんですよ?責任問題になりたくなければ……ね?」
「わ、分かりました!」
「ンな人をバケモンみたいに……」
レンリさんはやや渋い表情を浮かべたが、土岐博士は澄まし顔で向かいの椅子に座る。先程の動揺などどこ吹く風だった。完全に三人以外の職員がいなくなったことを確認してから土岐博士は口を開く。
「それで、どういった用事で?」
「……」
「……ええと」
レンリさんは本題を切り出すつもりがないらしい。どうしよう、俺達はある意味呼び出されただけだから何も考えてなかった。土岐博士は妙に圧がある笑顔でこちらを見ている。
「…………何も、知らされていないんですか?」
「は?」
やばい、口が滑った。
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