第十七話 誰が彼
「沖名研究部門職員……というのは、安芸博士の上司ですね」
「安芸博士?」
「はい」
「土岐博士の上司ですらないのか」
意外に思ったのは俺だけじゃなかったらしい。大雅も虚を突かれたような表情で安芸博士の、と呟く。知らない存在……とは言わないが、札木博士や式野博士に比べるとどうしても影は薄い。
「土岐博士の上司ではないんですか?」
「違うはずですね。上司一人につき主要な博士は一人の筈……」
アランの言葉に私と大雅は顔を見合わせる。今まで私達は式野博士は責任者の類だと思っていたんだが、あいつにも上司がいるのか。一切見たことないんだが。
「土岐博士の上司というのは?」
「根田幹太氏、土岐博士よりも前にヒュリスティックに来ていますね」
「根田……あ、確かにいましたね」
「その根田との面会ではない理由がある、と?」
「一番可能性が高いのは…………根田氏との接触を感知されたくない、あるいは、土岐博士がいるから会わせられない?」
「どういうことだ?」
土岐博士も禅譲の研究員なのだからわざわざ大雅を離す意味がないだろう。事実として大雅は土岐博士のことを知っていた。大雅もふむ、と顎に手を当てて首を捻る。
「土岐博士が私を避ける理由も、禅譲家が私と土岐博士の接触を厭う理由もない筈なんですよね……何なら土岐博士は私の事を嫌いでも好きでもなかった筈ですし。無関心、というのが正しかったはずです」
「では……根田氏と大雅さんの接触を感知されたくないというのが正解ですかね」
「仮にそうだとして、その沖名という職員は根田職員と知り合いなのか?」
「責任者同士、知り合いではあると思いますよ?懇意にしていない相手の名前を出すこともないだろうとは思っていますが」
加えると禅譲との関係も深いと見るべきか。……何者なんだその沖名という職員は、アランの補足説明がないということは恐らく特別な家の出身でもないだろうに……。確か土岐博士はヒュリスティックが正式に稼働し始めたことに移籍していた、それより前となると……かなり古参ということになるんだが。
「情報も欲しいですし、沖名さんが何故禅譲と繋がりがあるのかも探りたいんです。レンリさんと一緒に応じても?」
「レンリさんと……まぁ、許可が下りているのなら」
「支部の医療職員じゃないのか」
「大丈夫ですよあの人下手な職員より適性あるので」
「レンリさんからは根黒さんに言わないなら、と許可を貰いました」
「分かりました。ではスケジュールを調整しましょう」
「ありがとうございます」
当然の様に許可を出すのも頼むのもおかしくないか?……一番おかしいのはそれを受け入れる方かもしれないが。多分研究部門の職員が一番困惑するだろうな、と思ったが黙っておいた。
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