第十六話 探り合いの果てに
コンコン、と控えめに鳴るノック音。目の前にいるレンリさんは検査の手を止めて入室の許可を出す。
「失礼します」
「大雅警備隊員?どうしたんだよ」
「実は……」
しまった声を出しそびれた。ちらりと是非を問うようにレンリさんの方に視線を向けたがレンリさんは澄まし顔のまま俺の訴えをスルーする。良いんだろうかここに居て、大雅さんの反応的にも出来る限り内密にしておきたい内容のような気がするんだが。ぼんやりとしている頭ではあまりいい案が思いつかない。
「……沖名研究部門職員との面会?」
「はい。……どう思いますか?」
「まぁ、間違いなく禅譲の回し者だろうな……とは思ってるけど」
「そうですよね……問題は、沖名という名前を聞いたことがないという点なんですが」
大雅さんの知らない、禅譲の関係者。……順当に考えるならば大雅さんが警備隊に所属するようになってからやって来た、あるいはヒュリスティックが設立されてすぐに移籍した、辺りになるが。
「アラン職員かリアム職員に話は?」
「まだです。今は教団の方から人が来ているので……」
「それもそうか……いやじゃあ何で俺に来た?」
「恐らく根黒さんの話題が出ると思ったので」
大雅さんの言葉にレンリさんは押し黙る。そもそも大雅さんに連絡が来るようになった発端が根黒さんなので当たり前と言えば当たり前だ。そして根黒さんが巻き込まれることをレンリさんは望まないだろうと判断したからこその相談、なのか。
「……取り敢えず行くにせよ無視するにせよ、その沖名職員の詳細は必要になるな。想定としては土岐博士が接触すると踏んでたんだが……どうやら状況としてはもう少し複雑らしい」
「そうですね。出来れば接触して情報を集めたいところですが……その際には同伴をお願いしても?」
「構わん……が、根黒には言うなよ」
「勿論」
迅速に大雅さんへ口止めをするレンリさんと、当然の様に頷く大雅さん。あとでバレたらそれはそれは根黒さんに叱られるだろうけれど、レンリさんにとっては根黒さんが巻き込まれないことが優先事項であるため一考の余地すらないのだろう。
「報告はそっちに任せる。俺を連れて行くこと自体は言っていい。多分アラン職員なら俺を連れて行くって言っただけで許可が出るだろ」
「信頼されていますね」
「いやあれは…………まぁソウダネ」
言いたいことを呑み込んだような声音でレンリさんは大雅の言葉を肯定する。信頼……なんだろうか、それを認めたら俺に対するレンリさんの反応も信頼、ということになるような気がするんだけれど。
「……いいんですか。俺も聞いてて」
大雅さんが退室してからようやく口を開く。俺が根黒さんに伝える可能性……というのは微塵も考慮していなさそうな表情をしているな。レンリさんは俺の言葉に緩く口角を上げる。
「なぁに、どうせアラン職員だってお前が同席しててもスルーするぜ?寧ろ情報を与えて記憶を刺激させようとするに違いないね!」
「そんな今考えたかのような言い訳を……」
「ハハハばれたか」
確かにアランさんも気にせず会話を始めそうな気はするけれども。警戒されていないのは良いんだが、もう少しプライバシーというものを考慮してほしい。
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