第十話 後の今・前編
「一応、処分が下ったのはアカデミーに出入りする宅配業者だったぞ」
「宅配業者……」
「ああ。しがない一般教諭に詳細は語られなかったがな、そういうことにした、という噂だけは流れてきている」
札木博士のどこが一般教諭なんだろう。俺と青藍さんは揃って呆れたような視線を向けるが、札木博士は素知らぬ顔でミツバくんと遊んでいる。
「じゃあ犯人は不明のまま……ってこと?」
「ま、分かったとしても処分はされないだろうな。少なくともアカデミー側にやる気がない」
「ない!」
「そうですか……」
アカデミーのその後を知りたいだろう?と律儀にも報告の為だけに潜入して来た札木博士。散歩のような軽いノリで潜入されることについて青藍さんは非常に不本意、という表情を浮かべていたが結局情報は必要なので黙認することにしたらしい。アルマさんは用事がある、と言っていたのでいるのは俺と青藍さん、それと遊びに来たミツバくんだけだ。
「そういえば……札木博士は大丈夫なんですか?」
「俺か?特に問題はないな。いやはや、入江が早い段階で重戦闘区域にスカウトされていて助かった」
「どういうこと?」
「入江の存在を研究部門は認知していない、ということだな」
「ない!」
「そうだぞないぞ」
認知されてないんだ……確かにヒュリスティックに来てほぼ初日に重戦闘区域へと移動になった訳だけど、記録は残ってるものだと。……もしかして名前だけなのかな。
「一応当分アナタシアには大人しくしているようには言っているがな。正直アイツ以外に俺を制御出来る奴もいないからそう酷いことにはならないだろう」
「それならいいんですけど」
「それよりも問題なのはあの呪具だな」
「何かあったの?」
「ああ。これなんだが」
そういって札木博士が机に置いたのは一見するとお守りのようなもの。だが、世界視を起動するとあの繭についていたという呪具に近い気配が見えた。
「うわっ!?」
「大丈夫?」
「はい。……これ、呪具……ですか?」
「いや、呪具に限りなく近い魔導具だ。これは供給源を絶ってるから影響ないが、アカデミーはもう悲惨なものだぞ?」
「何でこんなの広がってんの……?何も見えなくても嫌な気配するじゃん」
「禅譲から人が来てな。”お守り”と称して配られたらしいぞ」
「お守り???」
わざわざ禅譲がこれを配ったということは、だ。……明らかに最近の騒動に絡んではいるんだろう。あの繭がなくなったからこそかな、情報自体は近いけれど同じ効果が得られるとは思えない。あれはあくまでも龍の存在ありきでの呪いだったと思うんだけど。
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