第八話 過去の悲劇
「ヒュリスティックの最初期……”ノーウェア”と呼ばれていた時代を、知っていますか?」
「いえ……」
「……確か、まだ公には職員を募集していなかった頃、ですね」
「はい」
普賢さんの言葉にアランさんは頷きを返す。職員を募集していなかった頃……そんな時代があったのか。初期の頃と言っているしここまで広くなかった頃の話なのかもしれない。
「当時重戦闘区域の職員として働いていたのは私とリアム、そしてひびきとほむらです。元々ヒュリスティックの設立にアンシエントが関わっており、ほむらとひびきは私達兄弟の”監視役”として任に就いたと聞いています」
「ああ、成程……」
監視役……か。アランさんの今の状況を見ても有り得るだろうな、と判断出来るラインではあるが、そんなにもアランさんとリアムさんを警戒する理由はあまり分からない。リアムさんも、となると単純に実力の高さだろうか。
「当時、私達はまだ幼く……表立って動いていたのはひびきとほむらの二人でした。特にひびきは他部門や軽・中戦闘区域の監督も行っており…………結果として、ヒュリスティックに潜入していた楽園教によって利用された」
「っ楽園教に!?」
利用……利用か。当時そのひびきさんの役割がほぼアランさんと同じだったとすれば、かなりの仕事量だっただろうし……セキュリティの観点から見ても利用されるという思考はなかったんだろう。なんとなくだが、青藍さんがアランさんに過保護になりがちな理由がここにある気がした。
「今思えばきっと予兆はあったんでしょう。いくらひびきが隠すことが得意だといったって、完全に秘匿することは難しかったでしょうから。……まぁ、当時の私は微塵も気付かなかったようですが」
自嘲気味にアランさんは笑みを乗せる。感情的になったり自嘲したり忙しいなアランさん。恐らくアランさんの中でもまだ消化しきれていない出来事なんだろう、あまり開示したがらないのも感情の制御が出来ないからか?
「ひびきを利用し恐らくヒュリスティックを壊滅させようとした楽園教ですが、最初に狙われたのがリアムであったが故に計画は頓挫しました。結果として楽園教はひびきを連れて逃走、ヒュリスティックも甚大な被害は出したものの壊滅はしませんでした。……ノーウェアは再起不能になりましたが」
「そんなに……」
「状況的に加害者となったほむらはひびきを追って姿を消し、ヒュリスティックもまた、足りなくなった人手を補うため、またノーウェアを使い続けることが困難になったため現在の形となりました。ノーウェアは修復もされずに廃棄されたので……私も、知っていることはそう多くありませんね」
「楽園教が絡んでいるなら、どうして……」
「その事実すら、隠蔽されていますから」
アランさんは当然だと言わんばかりに目を細めている。確かに……今までの騒動での対応を見ても、わざわざ問題になりそうな騒動をヒュリスティックが開示するとは思えないな。
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