第六話 羽深リトとその保護者・参
「初めまして羽深リトさん。私はアラン、ヒュリスティックの重戦闘区域職員です」
「同じく、皇志葉です」
「羽深、リトです……」
困惑していても挨拶はしてくれるらしい。どうやら利用されていたときの記憶は一切ないらしく、アランさんから説明を受けて非常に驚いていた。
「そんなことが……すみません、迷惑をかけてしまって」
「いえ。問題ありませんよ」
アランさんからしてみれば戦闘にはなれど被害がなかったので些事だろう。実際俺も同じ判断を下すだろうという確信がある。とはいえ気にするなという方が無理だというのは薄々察していたので、アランさんも話題を切り替えるように普賢さんの方へ視線を向けた。
「ところで、差し支えなければ教えてほしいのですが……羽深家で、何があったんです?」
「……それは、どういう意味でしょうか」
アランさんの言葉に羽深さんも普賢さんも揃って声を硬くする。どういう意図の質問だろう、一見すると脈絡がないように思えるのだが。
「直接は関係ないのですが……かつて、ここに京極家の人間がいたもので」
「!京極家の……」
「はい。京極ひびき、ご存知でしょうか」
以前聞いた名前が出たな。確か、重戦闘区域にいた、いなくなった職員の名前の筈だ。アランさんの言葉に羽深さんは静かに目を見開く。
「知ってるも何も……ひびき様はいなくなったと…………。重戦闘区域にいたんですか?」
「ええ。初期の頃ですが、実働職員として」
「そうですか……良かった……!」
「……」
あまり見ない反応……今はいないという言葉を加味するとやや珍しい反応だな。羽深さんの言葉から察するに、職員としてヒュリスティックにいたことすら知らなかったと見える。
「リト、その人って確か…………お前を逃がす手引きをしてくれた人、だよな?」
「うん。あの家で唯一、飛べない僕を庇ってくれていた人」
羽深さんを家から連れ出す手引きをした、京極家の中では行方不明とされていた人物。アランさんにとっては家族同然の、羽深さんにとっては恩人のような人。どんな人だったんだろう、話だけを聞くと、他者に対して非常に献身的な人、というイメージが湧くな。
「かつて、というのは――――」
「……とある騒動がありまして、彼は行方不明になりました」
「そう……ですか」
「本人は京極家と連絡を取っていたように記憶していたのですが、どうやら対外的には職員になった時点で行方不明とされていたようですね」
「はい。元々京極家の中では”変わり者”として扱われていたので……行方不明というよりは死亡扱い、存在しないものとして扱われていましたね」
成程、だからこその実働部門職員なのか。
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