第五話 羽深リトとその保護者・弐
「……では、ここからは普賢楽……リトの保護者として伺いたいのですが」
「ええ、構いませんよ」
気配が変わったな。さっきまでは一線引いた、いわば事務的なやり取りだったのだが今は少し警戒というか、威嚇が滲んだような声音で普賢さんは言葉を紡ぐ。
「リトは、どうして巻き込まれたんですか?」
「一言で言えば、”適合者である”故に。こちらも正しく把握している訳ではないので曖昧な表現になりますが……楽園種族あるいは天使である存在を連れ戻すため、扉が開いていないのに彼らは手を出した」
「そこまでして……そんなリスクを冒してでも、連れ戻さなければいけない存在だった、と?」
「恐らくは」
龍が連れている存在が誰なのか、どういった存在なのかを正しく把握することは難しい。龍自身が詮索を拒むということもあるが、テオが気配に気付かなかったように、どうやら存在としては少々特殊らしいのだ。何かを知っているとしたらアランさんだと思っているがそのアランさんですら知らぬ存ぜぬを貫いているので俺達は全く分からない。
「……今は、安全なんですか」
「そうですね、少なくとも抑止力はあります」
「根本的解決は」
「今は、まだ。どちらにせよ準備が足りません」
準備、か。龍が結局どうしたいのかをアランさんは分かっているんだろうか。恐らくユウさん達を解放する際にも上位存在からの干渉はあるだろう、適合者、というのがどれくらい希少な存在なのかは分からないが再度巻き込まれる可能性は充分ある。本人ないし周囲が対抗策を持っていればいいのだが、この反応を見る限り厳しいのだろうか。
「ん……」
「っリト?」
「ら、く……?」
小さな呻き声がして、羽深さんが目を開ける。赤い瞳はぼんやりとしていて、それでも声の方向から判断したのか頭は普賢さんの方を向いている。まだ意識ははっきりとしていないんだろう、少しの間瞬きをするだけの沈黙が続き、やがてゆっくりと口を開いて、小さく咳をした。
「水をどうぞ」
「ありがとうございます。ほらリト、ゆっくり飲んで」
コップ一杯分の水を飲んだ羽深さんは周囲を見回して小さく首を傾ける。医務室なんて基本的にどこでも同じだからだろう、碌な情報を得られないと判断したのか、少し掠れた声で羽深さんは問い掛ける。
「ここ……どこ?」
「ヒュリスティックの医務室だって」
「ヒュリスティック……え、ヒュリスティックの?」
「そう。お前、身体乗っ取られてたんだよ」
「嘘……」
本人に乗っ取られたという自覚はなかったのか。反応的に適合者だという自覚もなかったのか?もしそうなんだとしたら対策もなにも、という状況だったんだろうな……。
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