第四話 羽深リトとその保護者・壱
「初めまして。執行官の普賢楽です」
「ええ初めまして。重戦闘区域職員、アラン・アンシエントです」
「同じく皇志葉です」
羽深さんの保護者として来たのはアランさんと同じくらいの年齢であろう人物だった。緑髪を後ろで一纏めにした青年は幅の広い剣……のようなものを背中に背負っている。
「こちらです」
青藍さんによって人払いされた廊下を通り、医務室へ。室内にいた宇月は俺達が来たのを確認してから退室する。未だ眠ったままの羽深さんを見た普賢さんは、そっと頬に触れた。
「……リト、良かった」
「少し、情報共有をしても?」
「ええ。もとよりそのつもりです」
普賢さんの向かいにアランさんが椅子を用意したのでそれに倣って隣に腰を下ろす。青とも緑ともつかない瞳は俺達に真っ直ぐ向けられていた。
「では改めて。この度は羽深リトを保護していただきありがとうございます。そして、執行官でありながら多大な迷惑をかけてしまったことについて深く謝罪します」
「いえ。上位存在相手に対抗しろ、という方が無茶でしょう。寧ろこんなにも早く対応してくださりありがとうございます」
流石にしらばっくれる可能性は低いと思われるが、情報の精査、といって時間が掛かる可能性は充分あった。何かと騒動が起きがちなので迅速に反応してくれるだけで助かるというのは本心だ。
「……やはり、上位存在が関与を……」
「そうですね。今回の騒動におきましては、どうやら天界から逃げ出した人物とそれを守る怪異がいたようで……」
「天界から……逃げ出した?」
「はい。詳細は現在調査中ですが、想定よりも厄介な事態になっているようですね。アカデミーの地下でヒュリスティックの研究部門による実験が行われていたようです」
「ヒュリスティックの?」
普賢さんは驚いたように目を丸くする。アカデミーで、ヒュリスティックの研究部門が実験をしていた、というのは一般的には有り得ない……というか、意味が分からないだろう。わざわざ研究部門がアカデミーで研究する意味がない。
「……研究部門については、そちらの管轄ですね?」
「ええ。ですがアカデミーに関しましては」
「分かりました。執行官として調査しましょう」
アカデミーがどこまで関与しているのかは定かではないが、流石に無関係という訳ではないだろう。とはいえヒュリスティック、しかも重戦闘区域が調査に乗り出すわけにはいかないので普賢さんの協力が取り付けられたのは僥倖だった。
「因みに、アカデミー地下での研究とは、具体的に何を?」
「現時点で判明しているのは、呪具の拡散でしたね」
「呪具の……あれ、確か最近、一般区画で拡散されている呪具は”ヒュリスティックの研究部門の技術が外部に漏れた”からだという噂がありましたね」
「ええ。ヒュリスティック内での情報精査はしましたが、まさかアカデミーも関与していたとは」
しれっとしてるなアランさん。まぁ実際呪具の開発に研究部門が関わっていても、アカデミーで行われていた実験をアランさんが知る由もないので、しらばっくれている訳でもないのがややこしい。
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