第四十三話 奪われぬように
明けましておめでとうございます。今年も秩序の天秤をどうぞよろしくお願いいたします。
「――――でも」
静かな声が耳を打つ。どこか上の空で言葉を吐く入江は、どうやら何らかの声が聞こえているようだった。
「ここに居たら、君達はもっと奪われる」
「入江?」
「せめて、離れたくないのなら、奪われたくないのなら。……ここからは逃げた方が、良い」
成程説得中か。波長が合ったのが入江だったのは正直意外だったが説得出来るならもう誰でもいい。香月の幸運でも誤魔化せなくなってきた状況の中、繭の鼓動が一際強くなる。
「教えて。ここにいることが願いなの?それとも────二人が共にいることが望みなの?」
「……近付いてきてるな」
「最悪正面突破かな……」
「勘弁してくれ……」
「その場合、お前は香月……あー花菱先生をつれて逃げろよ。一般人の保護とか言ってな」
「……無理があるのでは」
「安心しろそれどころじゃなくする」
どうせ正面突破を選択した時点で壊滅的被害を与えることが最優先事項になるんだ。この場に誰がいたのか、なんて覚えさせる気はないし仮に姿を見られても言及する暇なんて与えない。
「あっ」
「えっ」
「うわ」
「っ」
繭が開く音がして、直後轟音と共に地上へ向かって何かが飛び出していく。繭の大きさに見合わない太さと長さだったな、何だったんだあれ。
「追いかけましょう!」
「そうだね。どちらにしろ逃げた方が良さそう!」
「少し足止めするよう細工しました!」
「よくやった!」
有能だなアナタシア。急いで地上に出てから空を見上げれば、大きな龍がぐるぐると円を描いている。
「龍……!?」
「アレが怪異か?」
「多分……?」
怪異にしては分かりやすいフォルムだな、と思っていたがどうやら想定とは違うらしい。実際現時点でもこちらに興味がなさそうだからなあの龍。
「何してるんだ……?」
「もしかしなくても困ってる?」
「ええと……あ、アカデミーの結界に引っ掛かってるのかも」
「何してんだアイツ」
同世代なら結界くらい平気で壊せるだろ、そう思った瞬間に空から強いプレッシャーが降ってきたので視線を上げた。
「来るな……?」
「何……です、か、これ……!?」
「体が……重い……!」
「アルマ、行ける?」
「余裕」
入江とアナタシアはプレッシャーに苦戦しているようなので勝手に動き出す。確かに同世代以上じゃないとこのプレッシャーは強すぎるな。あの龍モドキも嫌そうにしているのが肌感覚でわかる。
大きく跳躍して一撃、空が割れるように亀裂が走って、空間ごと大きく壊れた。
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