第三十八話 パンドラの×
「わざわざアカデミーに置いている意味があるはずだ。そもそも論として研究部門の方がセキュリティは高いからな」
「でも、ヒュリスティックにはアランさんがいます」
「流石にアラン職員は研究部門内部に潜入出来んぞ。正面から入るのも厳しい」
そうなんだ。アランさんが何らかの取引を経て研究部門に足を運んでいることは知っていたけど、まさか潜入すら不可能になるレベルだとは思いもしなかった。リアムさんへの反応をみるにアランさん自身が不可能だと判断しているというよりかは多分、周囲が研究部門への潜入を拒んでいるのだろうな。
花菱先生との話し合いが終わったところで俺は札木博士の部屋へ。情報の共有と次の作戦を考える。どうやら俺が来ることは想定済みだったのか最初からアナタシアさんもいた。前回同様ロウソクに火を灯してから、札木博士は書類を読みつつ思案するように首を傾げる。
「地下に繭……か」
「繭となると進化しそうなものだが……まぁ多分違うだろうな。仮にしたとしても本人の意図はなさそうだ」
「何故わざわざ繭を作り出すんだ……?」
「それに関しては多分逆」
「逆?」
逆……というと、どういうことだろう。札木博士の真意を取り損ねて首を傾げれば、アナタシアさんもまた少し考え込んでから疑問を口にする。
「繭を作り出すことが目的じゃない?」
「それはそうだな。繭はあくまでも機構としてのもの、そこに本人の意思は介在しないし、よしんばあったとしてもまぁ防衛反応以上の意味は持たない」
「……」
「入江、お前はこの資料を読んだか?」
「いえ、そこまでちゃんとは……」
「ふむ。アナタシアは……読んでないな」
「お前が読んでいるからな」
「ははは」
軽く笑いながら札木博士は資料の一点を指さして俺達に見せる。……指摘されたところで良く分からないな、辛うじて中にいる存在について書かれていることは分かるけれど。
「あの中にいるのは天界由来の生き物だ。だが繭を生み出す機構というのはどちらかといえば怪異に由来する。この意味が分かるな?」
「いや知らないが」
「ええと……矛盾していることは分かります」
「そうだろうそうだろう。天界由来の生き物が怪異の性質を携えているなど意味が分からない。……いや、怪異に変質した場合は話は別なんだが、情報から察するに変異はしていないだろうな」
「怪異に変質……」
「……ちょっと待ってくれ、今の時点で聞きたいことが増えたんだが」
「ここまで特殊な事例を踏んでいるとなると恐らくどこかの歴史に刻まれてはいるだろう。故に、情報を探るなら歴史部門だろうな」
「歴史部門か……」
そうなると先に繭の中身を救出してから調べることになる……のか?
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