第三十七話 情報共有・後編
「抽出が失敗、というのは……?」
「この呪具、本当はここから針が伸びていてこの先端が繭に刺さってたんだよね。で、どうもこの呪具を介して双方に情報ないしリソースを交換してたみたいで……恐らくだけどその繭から一人分、存在を引き出そうとしてたんだと思う」
「一人分……」
「多分二人揃ってるのは都合が悪いんだろうな。それがどういう方向性なのかは分からんが……アイツらも早々手が出せないのか呪具の損失に気付いているにも関わらず放置されていたな。だから仮に本気で盗むなら今夜だ」
「その繭って……どれくらいの大きさなんですか?」
「んー……俺達が見上げるくらい?」
それって盗める大きさじゃない気がするのは気のせいだろうか。少なくともあの螺旋階段の幅じゃどう頑張っても地上にすら出せない気がするけど。
「問題は、詳細が分からなきゃ壊すもんも壊せないってことだが」
「そうなんだよなぁ……せめて中にいる子と会話が出来るか、状況が分かれば別……」
「状況?」
「うん。繭から切り離そうにも、どこまで切り離していいものか分からなくて」
「……」
情報……が分かればいいのかな。ただの繭ならきっと世界視は起動する。だが話を聞く限りただの繭と言うには内部との繋がりが強そうだ。俺の沈黙で何かを悟ったのか、アルマさんが口を開く。
「お前の世界視ならいけるか?」
「どうでしょう……その繭がただの繭なら、多分」
「あー……ちょっと難しいところだね。流石にあの繭の構成物質が人間そのもの!とまではいかないだろうけど、下手に壊すと中にいる子に影響が出そうなレベルなのは確かだし……」
「逆にいうと、俺が情報を読み取れる場所は切り離しても問題ない筈なので……」
「成程?お前がいれば確認しつつ切り離すことも可能か」
「恐らくは」
あくまでも可能性の話だが、一考の余地はあったらしい。問題があるとするならば確認しながら切り離すとなれば相応に時間が掛かるはずで、昨日時点で侵入に気付かれた状況で果たしてそんな時間を確保できるのか、という話になる。
「俺がいればどうにか……いやどうだろう、俺がいても例の――――幸運な人間がいた場合ちょっと厳しいものがあるんだよね」
「幸運な人間?」
「うん。確率操作と言い換えても良い」
「……」
確率操作。地下を探すときにも問題になったそれ。なんだかアカデミーに来てから運について話題になることが多い気がするな。札木博士達も何も言っていなかったら関係はないと思うけれど……何故だろう、ちょっとだけ気になるな。
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