第三十三話 為し崩し・前編
咄嗟にアルマさんがアナタシアさんのことを指摘しなかったのは敵味方が分からなかった……以上にこの状況が把握出来ていないからだろう。今からアルマさんに状況を把握してもらう必要があるが、目の前にいる敵対している職員に情報を漏らすわけにはいかない。……いけるか?
「あ?どうなってんだ一体。部下は一人じゃなかったのかよ」
「――――成程?少し目を離した隙に随分と苦戦してるみたいだな」
「ちょっと状況が分かんないんだけど……アナタシアくんが戦ってるの、誰?」
「そもそも何で花菱先生はここに……?」
「外に置いていったら見付かるからな」
どうやら職員の反応でどちらが味方か、を把握したらしい。それはそれとして花菱先生……という教師は何者なんだろう。わざわざ夜中のアカデミーに忍び込んだ?どうして?
「三対一は過剰戦力だろ」
「……っは、馬鹿言え、一般人の護衛が必要な時点で人数も戦況も変わんねぇよ」
煽るような発言だが真理だ。三人が万全の状態なら有利と言っても良いだろうけど、今の状態ではどれだけ最善を尽くしても互角にしかならない。万が一があるとすればアルマさんの実力次第というところがあるけれど……かなり厳しいと言わざるを得ない。
「ほーん……入江、こいつの護衛頼む」
「あ、はい」
何やら納得という感情からかなり掛け離れた声が聞こえて、アルマさんは花菱先生を俺に預ける。何をする気……なのかは分かっているけれど、勝算はあるんだろうか。
「そんだけ煽り散らかすんだ。さぞお前は厄介極まりない、負けなしの存在なんだろうな?」
「なんだ僻みかぁ?本当かどうかは試してみりゃいいじゃねえか」
「じゃあ遠慮なく」
軽いステップを踏んで一気に加速、正面からの攻撃だったにも関わらず職員は吹っ飛んだ。武器を持っていたようには見えない、動きをみる限り自分の拳だけで衝撃波を発生させていたようにも見える。……衝撃波が出るレベルの攻撃ってなんだ?
「おっも……!?」
「なに衝撃だけで吹っ飛んでんだよ。もっと気張れや」
「無茶いうな……」
真横にいたアナタシアさんは攻撃の圧を感じたんだろう、平静を装ってはいるものの口角がひきつっていた。遠目からみていた俺も驚くレベルだったので、アナタシアさんの反応が正常だと思う。
初手から吹き飛ばされた職員もアルマさんの強さに気が付いたらしい。さっきまでの余裕のある笑みは崩れ、明らかに不機嫌であることを隠そうともしない。このまま押し切れればどうにかなる……かな。
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