第三十一話 その中は”こどく”になり得るか
「なんだろうなぁこの繭みたいなの……中に気配があるから中身はあるんだけど」
「入れ替えでもしてたのかよ」
「いや違うね。これにそんな大容量は入らない。入っても精々要素くらいだよ」
「もっと物騒になったんだが」
それって最悪人格だけ入れ替える、は可能ってことじゃねえか。そういうのをするのはどっちかっていうと人外っていう認識があったんだが、どうやら人間もするらしい。
「悪意を詰めて……それで、純度を上げる?」
「何の純度だよ」
「……憎悪の、かなぁ…………」
「……」
心底くだらないな。わざわざ上げなきゃ使いモンにならない憎悪なんてあっても無意味だろ。香月も眉を潜めて繭に手を触れる。よりによって憎悪は感情だからな、それが実質的な呪いとして機能しようとも、コイツに出来ることは何もない。
「……ねぇアルマ。これ、叩き壊せる?」
「俺を誰だと思ってんだ」
「これ多分天界由来のものっぽいんだ。そんでもってこの繭も中の子の一部」
「中身同世代かよ」
「うん。しかも割とピンポイント」
「勘弁してくれ」
俺達の世代ってことは下手すると楽園種族の生き残りの可能性がある。流石に完全な旧族はもういないと思うんだが……こんな状態で残ってるのはもう天使か旧族よりの新族しかいないだろ。どちらにしろまともに生きられない存在、最も利用され、そして悲劇を辿った世代。
「普通に破壊……するのは不味いか。どこまで壊していい」
「この繭を構成する概念が拒絶と……あれちょっと待って?何か残ってる」
「は?」
「あれ……これもしかして一人出された?」
「は???」
おい手遅れじゃねえか。慌てたように呪具と繭を交互に見やる香月を横目に、俺も繭に触れてみる。微かに脈動している繭の表面、成程うっすらとだが別の気配が漂ってるな。もう少し探れば内部にも二つの気配があるのが分かる。……じゃあ表面に漂ってるのは例の悪意か?
「いや違う……違わないんだけど、何か思ってるよりも変なことになってない……?うわー紙とペンがほしい……!」
「持ってねぇぞ」
「分かってるよ……!どうしよう、これアルマに壊してもらうにも解析は必須だし……!別にアカデミーから除籍されても全然困らないけど、それはそれとしてまず解析が終わらない……!」
「取り敢えず分かってることを吐け。話はそれからだ」
「ええっとね…………この子多分、楽園種族の中でも怪異に食べられた子だと思う。お前が封印されるちょっと前」
「怪異に食べられた?しかも俺が封印されるちょっと前?」
「うん」
そんな分かりやすい事例、忘れる筈がないと思うんだが。いや分からんな……そもそも別に俺は天界の騒動とか心底興味がなかったんだよ。多分コイツが話のネタにしてなきゃ覚えてないぞ。
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