第二十九話 望まぬ遭遇
「どういうことですかっ……!?」
「分からん……!だが、彼奴と出会うのだけは本当に不味い!」
アナタシアさんがここまでいうということは多分相手は研究部門なんじゃないだろうか。勢いよく通路から飛び出して元に戻す、息を吐く間もなくアナタシアさんは俺を連れて部屋から出ようとした。
「おいおい、挨拶もなしかよ」
「っ!」
「なっ……!?」
世界が書き換わる。少し目の前を浮遊していた光の玉が消えて、背後から知らない声が降って来た。
「っ……最悪だ」
「そうだな。最悪だ。まさかお前が侵入者とはな?」
「……」
知らない職員だな。そりゃ俺が知ってる方が珍しいんだけど。……多分、服装で俺がヒュリスティックの職員だとは見抜けてもそれ以外は分からなさそう……少なくとも重戦闘区域の職員だとは気付かれていない、筈。
「そっちはお前の部下か?いたいけな職員を巻き込むなんざ、悪い子だ」
「はっ……そう思うんなら見逃せ」
「やーだね!」
「っ!」
予兆なく加速し、そのまま接敵。反射的に腕を交差させて攻撃を受け止めた、重い一撃に数歩後退る。追撃が来ないように大きく腕を振れば、軽い身のこなしで避けられる。
「アナタシアさん!」
「仕留めるぞ!」
「っはい!」
ここから逃げるのは不可能、ならば迎撃しかない。腹を括って斧を構えれば相手は殊更に口角を上げて剣を握りしめた。
「カトラス……?」
「気を付けろ、彼奴に特性は通用しない」
「えっ」
「ネタバレが早いじゃねえの。少しくらい驚く顔が見たかったんだがな?」
俺の特性を知っていてわざわざ忠告したのは何故だろう。少なくとも目の前で世界視を使用したんだから、アナタシアさんは俺の特性が戦闘に影響を及ぼさないことくらい……違うな、忠告じゃなくて俺の特性が戦闘系じゃないことを知らせないためのブラフだ。先に忠告していれば俺が特性を使用していなくても何ら不自然ではない。
「何でここに……」
「そりゃこっちの台詞だ。わざわざ監視任務放り出して何してんだ?」
「……安全確認のためだが。札木研究職員がアカデミーの教師をしていることは極秘扱いとはいえお前も知っている筈だろう」
「ま、そうだな。監視役の癖に甲斐甲斐しくて涙が出そうだぜ」
「先に脅威は排除しておかないと、知的好奇心の赴くままに問題を起こすからな!」
決して胸を張って言う事ではないな。あまりにも理由としては散々なものだったけれど説得力はあったらしい、良いのか札木博士、かなり不名誉な信頼を受けてるぞ。
会話の途中でも構わず攻撃を仕掛けて来る相手を対処しながら隙を伺う。研究部門の職員……にしては強いな、一撃一撃が強くて、腕が痺れそうだ。二人を同時に相手してもまだ喋る余裕があるっていうんだから嫌になる。
「本当に……!嫌になる……!」
「恨むんなら好奇心旺盛な自分の博士を恨むんだなァ!」
高笑いでもするように勢いよく剣を叩きつけられて大きく吹っ飛んだ。この状況……不味いか?
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




