第二十七話 捜索・参
「この辺っぽいんだけどなー」
「範囲広すぎだろ」
中庭だぞここ。もう少し範囲を絞れなかったのかコイツ。……逆に考えるとコイツの幸運でもここまでしか特定出来ないくらい相手の運が良いのか。
「……この辺一帯の因果でも破壊するか?」
「やめなさいやめなさい、こんな広範囲でそんなことしたら速攻で居場所特定されちゃうよ?」
「人いねぇから問題ないだろ」
「人だけに範囲絞れるならね?お前別にそんな制御得意じゃないでしょ」
まぁそんなに器用な方ではないが。香月が止めた行動をわざわざ実行する必要はないと判断して別の手段を考える。破壊行動が駄目となると香月の幸運に頼るしかない訳だが、その幸運ですら越えられないとなると……さて、どうするべきか。
「んー……お、この辺かな。ちょっとアルマーここ壊して?」
「ここ?何壊すんだよ」
「えっとねー見えるかな……これこれ、この線」
魔術……じゃないな、何だコレ。あちらこちらに張り巡らされているとかでもない、ただ一本だけ握りしめられている糸のような線は何の属性も持たずに香月の手に収まっていた。
「破壊……で良いのか?何だよこれ」
「敢えて言うなら糸、かなぁ……?ほら、緊張の糸とかいうじゃない?あれの幸運バージョン」
「はー……そんなのあるのか」
「あるね。てことで斬って?」
ピンポイントで壊せば被害は最小限で済む。軽い抵抗と共に千切れた糸はサラサラと崩れ落ちて、周囲を見渡した香月は迷いなく一点を指さした。
「ここ。と……これかな、よいしょっと」
「秒じゃねえか」
「そりゃ拮抗してた幸運が切れればこっちのもんよ。アルマがいれば百人力だよねー」
本当に幸運が拮抗していただけだったのか。……そもそもこいつは運の良さだけで追手を躱して人間界に溶け込んでるような生き物だったな、考えるだけ無駄だったか。
香月が引っ張り出した扉の先は地上からの光以外の光源がなかった。どうするべきか、と俺が思考を回すより先に香月がライターを取り出して火を灯す。
「何で持ってんだよ引くわ」
「え、そこは用意周到だなって褒めるところじゃない!?」
「そのライター俺が昔持ってたヤツだろ。引く」
「そこは物持ちが良いな、で良くない?」
そもそもお前に渡した覚えすらねぇんだよ。わざわざ置いて行った覚えもないから、あの戦闘中に壊れることなくどこかの拍子に落としたであろうモンを拾い上げて保管してたってことになる。流石に引くだろそれは。
「引く」
「そんなに……?俺は君が封印されたとき結構凹んだのになぁ……」
「何でだよ訳分からんな」
「えぇ!?俺アルマとは良い友人だと思ってたんだけど……?」
「友人如きにその質量はねぇだろ」
「いやあるんだって。マジで世界にはアルマが思ってる以上にじっとりとした質量の友人関係ってあるからね?」
「はー……?まぁ別にどうでもいいんだが。それよりさっさと行くぞ」
「聞いたの君じゃーん」
別に他人の友人関係なんぞどうでもいいからな。ライターに関しても引きはしたが今更だから正直どうでもいい。引きはするけど。
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