第二十五話 二度あることは三度ある
「うぴょー!?」
「ちょー?」
「なんなな……!?」
「うわいっぱいいる」
知らない遣霊に驚きの声を上げるうぱーくんとレン。医療部門の職員だという宇月さんの腕の中にも寝ている遣霊が一人。リアムさんはアランさんの傍にいるもう一人の職員の方が気になっているし、皇は何故か腹部辺りにイデアを巻き付けている。
「どういう状況……?」
「重戦闘区域の専属として宇月さんを呼んだのと、遣霊出現による緊急保護ならびに魔術部門からの引き抜きで、東雲さんを連れて来ました」
「……どちらも遣霊持ちか」
「ええ」
医療部門、つまり医者と魔術部門、魔術師でありながら遣霊を出現させた二人。……珍しいのは確かだろう。現場に出る職員以外で遣霊持ちというのは少ない……もとい、ほぼいない。リアムさんも同じことを思ったのか、緩く首を傾げてから口を開く。
「魔術部門の方でなにやら騒動があったのは聞いた。召喚と融合……あと服従だったか洗脳だったか、……一つの研究でも即追放ものの魔術を複数研究していたとして、関係者は総入れ替えになる、と」
「ああ、そこまで酷かったのか」
「らしいな。……関係がある訳じゃないだろうな?」
リアムさんの視線にびくりと肩を震わせる東雲さん。主人の怯えに気付いたのか遣霊くんが守るように両手を広げている。アランさんもまた東雲さんを宥めるようにそっと傍に寄せた。
「寧ろ被害者だよ。……召喚には対価が必要だろう?」
「…………傍にいてやれ」
「言われずとも」
召喚には対価が必要、被害者。……触媒にされていた、あるいは対価の支払いに使われていたということだろうか。人見知りが激しいのかと思っていたけれど、もしかしたら人が怖くてアランさんの傍から離れないのかもしれない。
「ぴょーぴ?」
「とあ!ととてー!」
「う!うぴゃーあ!」
「なん!なんなな!」
「大丈夫ですかそこ、自己紹介出来てます?」
遣霊達でわちゃわちゃと喋っているな、と思ったら自己紹介をしていたらしい。保護者達がそれぞれ言葉を通訳して名前を教え合う。宇月さんが抱えている子はなつくんで、東雲さんが連れている子はとあくん、か。
「ところで皇……なんでイデアは微動だにしてないの?」
「分からん。スミレが巻き付けたんだけど、大人しすぎて逆に怖い」
「えっその黒いのイデア……!?」
「(ぽんぽん)」
宇月さんの困惑した声を受けてなのか、スミレくんがイデアを数回タップする。もごもごと先端が揺れて、にゅっと頭部……?と思しき部分が持ち上がった。
「とーたってんとー!?」
「みゅー」
「うぴゃー!」
周囲をゆらゆらと見回している風なイデアを皇の腹部から剥がし、数秒考えこむ仕草を見せるスミレくん。皇にもその動作の意味は分かっていないらしいが、基本的に止めることはない。やがて満足そうに一度頷いたスミレくんは、イデアを広げてブランケットのように被り、寝る体勢に入った。
「……まぁ寝るか」
「それでいいんだ……」
「いやどういう生き物なのイデア……!?」
宇月さんの困惑が尤も過ぎる。皇もまだ慣れたわけじゃないのだろうけど、イデアの形状変化に関しては諦めてる節がある。そもそもブランケットになっているのはまだよくあることなので俺達だってそこまで驚きはしない。
俺達がイデアを見て話している間にアランさんはリアムさんと少しだけ言葉を交わし、何らかの納得を得たのだろう。皇達に視線を向ければ、二人も気付いて視線を向ける。
「志葉さん、東雲さん。俺は一度魔術部門の方に顔を出してくるので……少し待機していてもらってもいいでしょうか」
「あ、はい。分かりました」
「分かりました……」
「みうはどうします?」
「みゅ……み」
「成程。……じゃあみう、お二人と一緒に待っててくださいね」
「み……!」
みうくんが元気よく頷く。皇達は談話室じゃなく自室の方で待機するらしいので俺は訓練でもしようか……と思っていたら、宇月さんに肩を掴まれた。
「一度検査したい。お前も、レンくんも」
「なんな?」
……レンの検査って…………何?
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