第二十四話 幸運な、
「あれ、君――――」
「?」
聞き馴染みのない声に振り返る。ぽかんとした表情でこちらをみる教師に覚えはない。……いやそもそも俺の知り合いなんざいる訳がないんだが。ゆるくこちらが首を傾げれば相手は少し視線を逸らしてから小さな紙を取り出す。
「ああ失礼、知り合いによく似ていたもので」
「はぁ」
「うん。……とてもよく似ている」
「初対面の相手に失礼では?」
そんなに似ていると言われたって俺は知らない。じっと観察してみたがこんな弱そうで軽薄な人間は見たことも会ったこともない筈だ。俺の言葉にへらへらと笑うその腹が立つ表情に少し眉を顰めようとして…………ふと、思考が止まる。
「――――、賭けたのか?」
「ふふ、いつだって私は賭けているとも」
うわ、と思わず引いた声が漏れる。気障ったらしい言い回しと試すような物言い、世紀跨いでも変わらないのかよコイツ、神とは不変存在であるとか言ってたがコイツに関してはもうちょっと変われよ流石に。ネタばらしが済んで満足したのか、目の前の半神……香月は俺を自室へと誘った。
「さて、改めて自己紹介をしておこうかな。久し振りだねアルマ、私は花菱香月、今は養護教諭としてアカデミーで働いているよ」
「はー……あの飲んだくれの医神が、ねぇ……?」
「飲んだくれてても医者だからネッ!」
正直医者を名乗っててもなんら不思議ではない生き物ではあるが、それはそれとしてよくアカデミーなんぞに滞在する気になったなコイツ。賭けと酒がなによりも至高、とかいう医神にあるまじき発言をしてた記憶が懐かしい。
「何してんだよお前」
「え、それこっちの台詞。見た感じわざわざヒュリスティックの職員として……しかも医療部門の護衛として来てるっぽいじゃん?何で?」
「呪具あんだろ。それの捜索」
「呪具?えぇーと、……どれのこと言ってる?」
「複数あんのかよ面倒だな」
「複数あるっていうか……全回収が目的?それとも本体だけ探してる感じ?」
「本体だな。子機なんて大元を破壊したらガラクタに戻るだろ」
ある程度状況は把握している、とみて良さそうだな。呪具なんて言う人間に害しかなさないものをわざわざ見逃している理由がいまいち分からなかったが、反応だけで判断するならコイツ自身には壊せない理由があるということか。
「本体ねぇ……?地下にあることは分かってるんだけど、俺が探しても見つからなくてさぁ」
「お前でも?」
「うん。どうも……俺の幸運に拮抗する幸運な人間がいるっぽくてね?」
「有り得ないだろ」
「そうでもないよ?」
当てが外れたな…………いっそコイツを連れまわすべきか?
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