第十八話 潜り込む・肆
「安雲、という教師は本日欠勤だそうだ。その上で、目撃者が複数いる」
「え?」
「……欠勤が嘘か?」
「いや、あの様子だと……欠勤自体は事実だろうな」
「…………ややこしいな」
あの後、アルマさんが戻ってくる前に藍沢先生が生徒を帰した。生徒の方はまだ話し足りない、という表情を浮かべていたけれど、藍沢先生はもう一刻も早く話を切り上げたがっていたし、俺としてもなんとなく調子が狂うのでそのまま帰ってもらった形になる。明確な悪意や敵意が見える訳じゃない、寧ろ好意的と言っても良い筈なのに……どうしてだろう、上手く言えないけれどあまり好意的に捉えられない。
「軽く見て来たが、本気で隠してない限り魔術痕跡はなさそうだ。あの爆弾が魔術由来じゃなかったことも鑑みると……魔術偽装は怪しいように思えるが」
「どうだろうな。その辺りは結局のところ俺達をどこまで警戒しているか、によるだろ。正確には……俺達がどこまで魔術を知っている、と認識されているかだが」
「それもそうだ。魔術部門じゃないから魔術関係はからきし、と認識してくれてりゃあ楽なんだがな」
魔術の造詣が深い相手に魔術で妨害を仕掛ければ解析されて術者を特定されるかもしれない、だが、魔術部門の職員ではない相手が魔術を認識しているとは思わないだろう。少なくとも俺が知る魔術部門の職員は大層プライドが高かったので、実働部門の職員に魔術の知識があるとは絶対に認めないと思う。
「そもそも安雲先生って何者なんですか?」
「魔術教師、だな。というか名字は違うけど多分東雲の保護者だぞ」
「東雲の?」
……そういえばアカデミーの教師とか言ってたっけ?何か東雲姓を名乗るのは自分だけ、とも言っていたような気がする……。どうも反応的にあまり認知されていないような言い回しだったんだけど、よくアルマさんは気付いたな。
「東雲……に聞いたところで、だろうな。関係者だから名前を使われたのか?」
「俺達が気付くかどうかがかなり賭けになるだろ。それなら入江の弟を使う方が余程」
「確かにな……」
「あの生徒は……巻き込まれただけ、なんですかね?」
「何らかの意図はありそうだが……現状そう判断するしかないな。そもそも入江の判断が遅かった場合、一番被害を受けていたのはあの生徒の筈だ」
「まぁそうだな。わざわざそんな自分が一番怪我をしかねない作戦はとらないだろ。……尤も、ここに滞在することが目的なら、話は別だが」
「……コンパスは振れませんでした。だから、別件の可能性も……?」
「まぁ、高いだろうな」
勘弁してくれ。
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