第十五話 潜り込む・壱
「意外だな。皇も来ると思ってたんだが」
「スミレくんがギャン泣きしまして」
「スミレが?」
「はい。それはもう盛大に」
皇の服がべしょべしょになるくらい抵抗して、最終的に熱を出したと言えば藍沢先生も納得してくれた。スミレくんがあそこまで嫌がるということは何かあるのだろうということでアカデミーに向かうことになったのは俺とアルマさんである。アルマさんはべしょべしょになった皇の服を見て若干引いていた。遣霊の中でもスミレくんは比較的大人しいというか、自己主張が薄い方だったので驚いた。
「アルマ……だったか。お前、アカデミーに知り合いとかいないよな?」
「いないはずだな」
藍沢先生の問いにアルマさんは間髪入れずに返答する。あまり人付き合いが多い方じゃないんだろうか、即答だったということは余程自信があるのだと思うけれど。
「なら良い。あくまでも俺の護衛として連れて行くからな、人がいるところでは大人しくしておけよ」
「はい」
「分かった」
正直俺はアルマさんがどれくらい強いのか、何が出来るのかを知らないけれど……アランさんが連れて来たからにはかなり信頼出来るだろう、と思っている。アルマさんもついて来てほしいという俺の頼みに対し割と軽い調子で頷いてくれた。
実働部門とバレても良いが、重戦闘区域の職員であることは伏せたい。俺は一応入江家の弟がアカデミーに通っている筈なので出来るだけ顔も見られたくはない。考え過ぎだと言われればそうなのだけれど、出来るだけ火種になりそうなものは避けるに限る。ぐるぐると隠すようにマフラーを巻いていれば、見かねたアルマさんに巻き直された。
「室内でもマフラーを巻き続けるつもりか?目立つだろ逆に」
「でも入江家の弟がいるかもしれないので……」
「せめてサングラスとかにしろサングラスとかに」
「帽子でも被せるか?」
「そうしろそうしろ」
「視界が悪くなるのは勘弁してほしい……」
「諦めろ」
ぐっと深く帽子を被せられて視界が狭まる。世界視にも弊害が出るから出来れば遠慮したかったんだけど、偽装の為に諦めた。そんな俺を見てアルマさんは少しだけ笑う。
「視界は悪いかもしれんが、似合ってるぞ」
「そうだな。マフラーよりは余程違和感がない」
「むー……」
二人が言うならそうなのか……別にマフラーでも問題ないと思ったんだけどな、シンさんも四六時中マフラーを巻いているし。シンさんは妖怪で俺は職員だから違和感の土台が違う、と言われればそれまでだけど。そもそもシンさんだって重戦闘区域にいるから気にされていないだけのような気がしてきたな。
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