第十話 昔日の邂逅
「フヨウラクユウ?」
「ああ。アカデミーの教授だったらしいんだが」
私の言葉にふむ、と小さな声を漏らすアラン。あまり知っているとは思っていなかったのだが、どうやらそうではなかったらしい。少し席を立ったかと思うとファイルを一冊持って戻って来た。
「ノーウェア時代に……研究部門職員候補として来ていたはずだな」
「そうなのか?」
「ああ。遠目だったけど見たことがある」
そうだったのか。正直ここまで言われても俺の記憶にはないんだが……私の反応にアランは柔らかな笑みを乗せる。
「覚えてないのも無理はないと思う。リアムギャン泣きだったし」
「えっ」
「あまりにも泣くから挨拶もそこそこに重戦闘区域に戻ってきたんだよ」
そ、そうだったのか……?一気にどういう反応をすれば良いのか分からなくなって、ただ恥ずかしいような気持ちがして頬に手を当てる。何で泣いていたんだろう、幼少期の記憶が曖昧、という訳ではない筈なんだが。
「…………ヒュリスティックに候補として来たということは、どこかのお抱えだったのか?」
「確かそう。ただ、その辺りの詳しい情報は残ってない上に複数の家から一気に来ていたから不明。俺も正直当時の資料までは全部見てないし……」
「このフヨウと呼ばれる教師が、根黒の特性情報を禅譲に流した疑惑があってだな」
「根黒の?……ああ、アカデミー時代に入手した、と……」
「おそらくは。実際根黒がアカデミーに通っていた時期に研究機関に特性をリークして根黒を実験体にしている」
「よくそんなのを同期達が許したな」
「本人は秘匿していたようだがバレて潰されてる」
「当然の結果だったな」
兄さんの記憶にもないのだったらこれ以上情報は出てこないだろう。どこぞのお抱え研究者だと知れただけ進歩だろうか、ノーウェア時代にヒュリスティックと関係していた家などそう多くはないと思っているのだが、どうなんだろう。
「禅譲家出身の研究者……?」
「いや……流石に当時時点で禅譲が関与しているとは思わないんだけど、どうだろう」
「まぁ、あれだけ怪異を嫌っている家が来る訳もないか……」
自由な研究のためだけに来ていた可能性もあるが、流石に初期の頃から関与しているとは思えない。土岐博士の移籍だって今の状態になってからだ、可能性としては低いだろう。
「……ん?候補、ということは……結局所属はしなかったのか?」
「ああ。それこそ本当にアカデミーの方に所属を決めたからな。珍しい選択だったから覚えてる」
つまり……ヒュリスティックよりもアカデミーに目的を見出した、ということか?
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