第六話 呪い足る
「何が見える?」
「何も」
「だよね……」
気配に聡いと言えば皇、ということで皇にも確認してもらおうと思い現場を見せた。反応としては予想通り、しかしそれと同時に皇ですら認識出来ない存在とはなんだろう、と思考を巡らせる。
「生き物……ではないと思う。でも、現象でもない」
「俺が知る限り、多分この気配は呪具……って呼ばれてたアイテムが纏ってたものなんだよね」
「呪具」
「うん。ただの与太話だと思ってたんだけど、これを見る限り本物だったのかも」
俺の説明に皇は二度瞬きをし、視線を斧に戻す。何も見えていないというのは事実なんだろうけれど……皇の視線は俺とは違うものを見ているような、気のせいかな。根黒さんは見えないし分からないから少し離れたところでじっと斧を見つめていた。
「生き物ではないとはいえ……指向性はないとおかしいですよね?というか呪具ってことは何らかの呪いだと?」
「どうでしょう……俺は別に呪いに詳しくないですし」
「俺もないですけど。……呪いってもっと昏くないですか」
「すみませんその辺は管轄外です」
皇の言葉は曖昧だけど意図は伝わる。本来、呪いというのならもっと悍ましくて厭うべきものの筈だ、ただ異常としか認識出来ないものを呪いと言うには少し弱い。
「そもそもの目的が分からないから……」
「入江の目にも映らないのか」
「うん。無機物ではないらしいね」
世界視は何も応えない。だからこそ気付いたともいうけれど。多分根黒さんを狙っていた、善くはないだろうという想像もつく、でもそれだけだ。それ以上の情報はない。
「……根黒さん、呪いと魔術って別のものなんですか」
「別物ですね。どちらもリソースを消費して奇跡を行使するものですけど、過程と結果が別物です。具体的には世界や自分を汲み上げて事象を起こすのが魔術、感情や運命を汲み上げて他者を奪うのが呪いです」
「では、ただ人を探す呪いは、呪い足り得ますか」
「そ、れは……」
根黒さんの言葉が止まる。皇はじっと根黒さんを見つめ、返答を待っていた。ただ人を探すだけの呪い、それは本来なら魔術に分類されるものなんじゃないだろうか。たっぷりの沈黙を経て根黒さんもまた同じ結論に辿り着いたのかゆっくりと口を開く。
「人を探し、奪うなら呪いでしょう。人を探すだけなら、それは呪いじゃない」
「じゃあこれは多分呪いではないです」
「……これ、人を探すだけの魔術ってこと?」
「機能としてはそれだけだから、多分」
皇のやけに確信に満ちた台詞に俺と根黒さんは顔を見合わせる。……どういうことなんだろう。
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