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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第十五章 扉は閉ざされた
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第五話 カラの肉体・後編

「アランにも少し話は通すが……当分の間は出来るだけ一人にならない方が良いかもしれないな。出来れば入江と共に行動していた方が良い」

「入江さんと?」

「ああ。見えない相手だろうと対応出来るという実績があるからな」

 リアムさんに自信をもって言われ少しだけ照れくさくなる。皇ほどの実力はないけれど、ちゃんと役に立てているという証のように思えた。

「俺としてはありがたいですけど……俺より雅也の方についた方が良いのでは?」

「医務室だからな、大抵誰かしらいる……というか、藍沢先生が」

「成程」

 実働部門じゃないけど藍沢先生がいるならそう問題は起こらないだろう。疑う余地のない事実だった。根黒さんも真顔で頷き、そのまま俺の方に視線を向ける。

「じゃあ入江さん、少しの間ご一緒させてもらっても?」

「はい」

「恐らく仕掛けてくるとしたら数日中だ。禅譲家の方で内部分裂が始まっていたら話は別だが」

「内部分裂?」

「ああ。元々大雅に対して悪意ばかりを向けるような連中がわざわざ連絡してきたんだ、明らかに信用とは別の目的があるだろう」

「成程……?」

確かに、大雅を信用して指示を出したというには今までの所業が邪魔をする。失敗前提で動いている、或いは大雅が動くことで目を逸らす目的があると言われたほうが余程納得出来る。

「……ん?」

「どうした入江」

「ええと……根黒さん、ちょっと動かないでくださいね」

「えっ」

 根黒さんの背後目掛けて斧を投げる。頬スレスレを通過して飛んで行った斧は、俺の視界に映る違和感を巻き込んで壁に突き刺さった。

「怪異……では、ないな」

「でも人間でもないですよね。何だろうコレ……」

「……えーっと、お二人には何が見えてるんです……?」

「「()()」」

 俺達の返答に根黒さんは黙って瞬きを繰り返す。俺もリアムさんも何かが見えている訳ではない。ただそこにいる、という確信があるだけだ。斧に巻き込んだ何かは微動だにしない、それが余計に気味の悪さを助長させていた。

「……あ、これアカデミーで流行ってた紛い物……呪具って言ってたアイテムに似てます」

「呪具に……」

「はい。といっても特段特別な気配を纏ってた訳じゃないんですけど。俺もこれを見るまでは与太話だと思ってましたし」

「今アカデミーでそんなもの流行ってるんですか?」

「恐らくは……?」

「正確には一般区画全体で、だな。少し前に沈静化したと思っていたんだが…………成程、呪具と同じ気配」

リアムさんは思案するように斧を見つめる。単体で動いていれば”異常”だが、何か無機物が纏っていればそれは”正常”になる絶妙な気配。俺が最初に気付いたということは偽装自体は非常にクオリティが高いものだろう。……思ったよりも厄介な案件かもしれないな。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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