第三話 カラの肉体・前編
「禅譲からの手紙……ですか」
「ああ」
「拝見します」
リアムさんから渡された手紙を一読した大雅は眉を潜める。どう見積もっても良い内容ではないと思っているけれど、反応的に想像よりも碌でもない内容の可能性があるな。
手紙の内容を隠す気など最初からないのか、大雅は中身が見えるように広げながら端的に結論だけを告げる。
「重戦闘区域内で……根黒雅也の捜索及び根黒雅俊を懐柔せよ、と」
「根黒さんを?」
「……やはり、警備隊と禅譲家は手を組んでいるようだな」
「そのようですね」
雅也くんを探す、ということは警備隊が意図的に重戦闘区域へ雅也くんを送り込んだことを知っているんだろう。加えて根黒さんを懐柔せよと言っている辺り、目的は二人の特性か。
「雅也さんに関しては知らぬ存ぜぬで誤魔化せますが……いや、寧ろ情報を抜くために泳がせた方が良いのか……?」
「そもそも────何故根黒の特性を知っているのかを探る必要がありそうだな」
「そうですね……」
ヒュリスティックに所属している職員のリストは門外不出であるし、特性に至っては本人が開示しない限り情報として記録すらされない。勿論特殊な特性は別だけど。自身が所属している部門、区域の職員リストですら閲覧には責任者の許可が必要だったはずなので、警備隊と手を組んでいるどころかヒュリスティックに内通者がいる可能性が高くなってきた。
「……この手紙を送ってきたということは、大雅がリアムさんに報告する、ないし検閲が入るとは思われてない?」
「確かに……或いは、検閲が入ってもスルーされる……?」
「私やアランが検閲をするはずがないと思われているんだろうな。特に私は、対外的な認識では戦闘以外に関心がないと思われているようだから」
「そうなんですか?」
「ああ。都合が良いからそのまま利用している」
重戦闘区域から出てこないリアムさんだからこそ発生した誤解、だろうか。アランさんが他の区域を回るから、アランさんだけが人目に晒されるから。誹謗中傷の類いは迅速に対処するアランさんが放置している辺り本当に都合が良いんだろう。
「根黒には話を通しておくか。禅譲家が直々に来るとは思えないが、刺客を寄越す可能性はある」
「では私は情報が得られないか少し泳がせますね」
「ああ。入江、ついてきてくれるか」
「?はい」
わざわざ俺を伴う理由ってなんだろう。疑問には思ったけれどさっさとリアムさんが席を立ったのでそのまま後を追った。
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