第一話 無自覚の価値
アランさんは重戦闘区域内にいるけどなんだかんだと忙しい。レイスの再興ついでに夏音くん達の居場所を作ろうとしているらしくて、リアムとの時間が充分に取れてないみたいだった。無理せず頼る、を覚えたリアムは今日は朝からずっと任務以外の時間をここで過ごしている。
どうやら椅子より地面に座る方が落ち着くらしいリアムは、大きなクッションに背中を預けてじっと書類を眺めている。ちゃんと中身を把握してそうってことは、多少余裕がありそう。
「……」
「どうしたのリアム。表情が硬いけど」
「……楽園教の動きが、芳しくなくてな」
これなんだが、と言いながら俺にも見えるようにと書類を見せるリアム。……一応俺は楽園教と確執があるんだけどな、こんな重要そうな書類を簡単に見せて良いんだろうか。俺に対する信頼……とみていいのかな。なつがうぱーと一緒に遊んでいるのを確認してから傍に座る。
「んー……え、最近も干渉されたの?」
「推測ではあるがな。雪代さん曰く、ほぼ確実だろうと」
トラップ型の術式、か。雪代さんが確認してそう判断したのなら確実だろう。魔術に対するカウンターを行うとしたら、狙いは東雲だろうか。
「中央の楽園教が動いてて?でも目的を見るなら西の方が余程有り得る……あれ、楽園教ってエリアが変わると思想も変わる筈じゃ?」
「そうなんだ。一応鳥飼氷雨の件のように地域を跨いで活動することもない訳ではないが……まぁ、そう多いものではないな」
「そっか、あれは確かに全域だったか」
「ああ」
一口に”楽園教”と言っても、組んでる団体によって手段は変わる。楽園さえ開けるのなら過程は問わない、とかいう許容範囲の広さ故に研究者から魔術師まで様々な人がいるらしい。そういう点だけはヒュリスティックよりも余程アットホームな組織に思えるが、思想が基本的に他者を害する方向性なので羨ましいとは思えない。
「楽園教の独断ならば良い。いや良くはないが、問題はヒュリスティックの一部と繋がっている……研究部門と内通している場合だな」
「……アランさんが不在のタイミングを狙えるから?」
「それもある。それもあるが……エリック博士にお前の情報が渡るのが拙い」
「俺の……俺の情報?」
思ってもみない言葉に思わず声が裏返った。確かに楽園教には俺の情報くらいあるかもしれないけど、あるとしたら西の楽園教だしエリック博士が欲しがるとも思えない。寧ろ楽園教側がアランさんや東雲の情報を欲しがるんじゃないだろうか。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




