閑話その22 吾輩の名前・前編
「猫と鳥の名前ってなんですか?」
「な……まえ?」
「名前!」
「ぴ!」
名前……名前か。そういえばずっと猫やら雛鳥としか呼んでいなかったか……テオの視線に促されるように猫達を見やる。猫はスミレと一緒にクッションでくつろぎ、雛鳥はゾエの肩の上に乗っていた。
「名前……は、特に聞いてないな」
「じゃあずっと猫と鳥って呼んでたんです?」
「まぁ」
「つけないんですか?名前」
「あんまり得意じゃないんだが……」
スミレの名前だってかなり悩んだ……悩んだというか、本人に怒られたというか。取り敢えず見たものをそのまま名前にするのは止めた方がいいんだろう、それくらいは分かる。
「……流石に猫と雛鳥じゃ不便か」
「ややこしさはありますよね」
確かにややこしさはあるだろうな。さてどうしようかと思考を回していれば、興味が沸いたのかゾエがいそいそと近くに座り込んだ。雛鳥は一言元気よく鳴いてからゾエの頭の上に登る。……高いところが好きなのか?
何もない状態から名前を考えるのは少しばかり難易度が高いだろう。自室ならともかく談話室なのだから何かあるはず、と視線を巡らせれば本棚が目についた。
「……そういえば、最初は木に登っていたな」
「木に?」
「ああ。確かあの木は────」
図鑑を持ってきてパラパラとページをめくる。記憶が正しければあの木は多分オリーブだった。……流石にオリーブと名付けるのは安直すぎるか。
「何で木に登ってたんです?」
「恐らくだが……雛鳥がそこにいたからじゃないか?」
「へぇ……あなたオリーブの木の下で生まれたんですね」
「ぴぃ!」
「じゃあ由緒正しい鳥さんじゃないですか」
「ぴっ!」
雛鳥は元気よく返事をしているが、俺はテオが何を言っているのかいまいちよく分からない。オリーブの木の下で生まれることに意味があるのか、……流石に名付けには関係ないな。
「名前……」
「名前」
「しっくりこないんです?」
「いや……そもそも候補も思い付いていない」
辛うじて名付けるとしたらオリーブだぞオリーブ。一人分しかないし口にした時点でスミレから猛抗議をくらいそうだ。雛鳥はいつの間にかゾエの頭から降りてせっせと文字の上を散歩している。
「ぴ、ぴ、ぴ」
「落ちるなよ」
「生命の木……へぇ、オリーブも生命の木として扱われるんですね」
「???何の話だ」
「ほらここ」
テオが指差した部分に目を通す。神話における生命を象徴する木……そんなものがあるのか。雛鳥も興味を示したのか小走りで駆け寄って来たかと思うとそのまま通り過ぎて行った。何がしたかったんだ。
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