第五十一話 記憶の欠片・後編
「っ!」
「ユウヒ?どうした?」
「何かありましたか?」
動悸を必死に抑えながら頭を振る。俺は……この鉱石を知っていた、見たことはなくても、何があったかを知っていた、筈だった。声が震えるのを抑えきれず、ただひたすら事実を告げる。
「……その鉱石、元は現世にありました」
「現世に?……何か思い出したのか?」
「はい。狂信者が……逃走よりも、利用を選択して。使われる前に回収しよう、と」
レンリさんに支えられてソファへと身を静める。開かれた情報の奔流に眩暈が止まらない、こんな些細な記憶ですら、死ぬほど体力を奪われるなんて。
「……狂信者」
「何があったのかまでは思い出せませんけど、確かにマスターは狂信者、と」
頼まれたのに、知っていた筈なのに。指向性を操作してピンポイントであの場所の物を回収するように仕向けた。あそこにいたのは、誰だったんだろう。レンリさんが関与しているのは間違いないと思うけれど。
「狂信者……確かに一時期、ちょっと厄介な相手に絡まれてたな。成程あのときか」
「では、レンリさん自身が作り出したものではない、と」
「恐らくは……?でもそれなら魔術残滓が付着してる理由がつかない……」
「当時大規模な魔術を使ったのでは?」
「いや現世でそんな…………あ」
「どうやら、そのようですね」
レンリさんの反応を見ながらアランさんはそう結論付ける。詳細を問う気はあまりないのだろうか、レンリさんが使ったという魔術の詳細も、絡まれていたという狂信者の詳細も問いただすことはなく、ただ静かに俺を医務室へ連れて行くように、とだけ言った。
「……俺としては都合がいいが。勝手に探る癖は直した方が良いと思うぞ」
「善処します」
「はー…………。ユウヒ、立てるか?」
「……すみません、無理そうです」
「まぁそんなもんだ気にすんな。……背負われるか抱えられるか、どっちがいい」
「背負われる方で」
横抱きにされる前に意思を告げれば黙って背を向けられる。見た目などを気にする余裕もないので大人しく身体を預ければ、レンリさんは軽々と立ち上がりアランさんの方に視線を向けた。
「詳細は、必要か?」
「……そうですね、過不足なく知れるのならば」
「余計なことしないならな」
「では、大人しく待っていますね」
水面下での駆け引き。言葉の意味を捉えられないほど無知ではないが、思考を回せるほどの余裕はない。気を遣われているのか、規則正しく齎される振動と身体をほぐすような温もりに少しだけ息を吐く。壊れそうなほどの眩暈は収まっていた。
「ユウヒ」
「はい?」
「お前は現世にいたことがあるのか?」
「どう……でしょう、なかったような気もしますけど……」
「そうか。それなら良い」
「……?」
……何の話だろう。
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