第五十話 記憶の欠片・前編
軽いノック音に顔を上げる。許可を貰ってみていた名簿を机に置いたタイミングで、扉の向こうから声が聞こえた。
「アラン職員、ちょっと良いか」
「レンリさん?どうぞ」
部屋の主に許可を得て入って来たレンリさんだが、室内にいたのがアランさんだけじゃなくて目を丸くする。これ、レンリさんだから気付いてもらえたが他の人だったら気付かず用件を切り出してしまう人もいるんじゃないだろうか。
「悪い、取り込み中だったか」
「いえ、もう用件は済んでいるので」
「まぁそうですが……すみません驚かせてしまって」
「いや大丈夫。それで、例の鉱石についてなんだが」
「俺は席を外しますね」
「悪いが道連れだ」
「なんでだよぉ……!」
前回もそうだったがどうしてレンリさんは意地でも俺を巻き込むんだろうか。鉱石に関しては関係ないだろどう考えても。どうにかして離席したかったがしっかりと腕を掴まれてしまったので諦めた。
「例の……と言いますと、魔術痕跡が見られた鉱石ですね」
「ああ。結論から言うと、確かに俺の魔術残滓が混じったモンではあった。正確に言うと……アラン職員が星海職員に渡した刀の類似品だった」
「……謎が増えますね」
アランさんが星海さんに渡したもの……ということは、特性を抽出して物質化させたもの、という認識で合ってるんだろうか。かなり高度な技能なのは分かる。
「問題は、だ。俺は別にこんなもんを作った記憶はないし、よしんばあったとしてスペースにある理由がつかない。精々あってもレイス以外だとデザートかツンドラだろ」
「同期が持っている可能性はあるんですね……」
「アイツらならまぁ……」
同期なら良いという判断が分からないんだが。……第一次の生き残りならば相当な実力者であることは疑いようがない、だからこその信頼、ともいえるだろうか。
「スペースは異常現象が起こりやすい、とはいえ基本的には事象の坩堝として無作為に万物を蒐集してる。だから確実にこれは元から存在していたものになるんだが……」
「時間軸がずれた可能性は?」
「流石にないな」
「ええ。世界規模でのずれが発生していたら青藍が気付くはずです」
じゃあもう確実にこれはレンリさんが作り出したもの、になるのか。レンリさんがただ忘れているだけならばいいのだけれど、そういう訳ではないだろう。分かることはあるだろうかと視線を向ける。
『成程、逃走よりも利用を選んだか』
『いつの時代も、狂信者のやることは変わらないな』
『……利用される前に逃がすか』
『ユウヒ』
『仕事を、頼めるか』
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




