第四十一話 誰もいない支部・伍
建物内の構造が変わっている感じはない。とはいえ今はないってだけで恐らく時間経過で変化くらいはするだろう、早めに核を見つけて叩かないと少し不味い。
「あの部屋……の可能性もあるけど、ワカバはどう思う?」
「ショウジキビミョウ」
「どの辺が?」
「ハラト、シンゾウハベツ」
「まぁそうだね。幾ら都合がいいからって胃の中に心臓は置かない、か」
コクコクと頷くワカバ。正直俺もそれは思う、うっかりで溶かすことはなくても侵入者が必ず辿り着く場所に核なんておかないだろうって意味だけど。普通心臓は奥深くに隠すもの、手の届かない場所に置くと思ってる。
「とはいえ、あそこ以外で可能性がありそうなのは……」
ざっくりと建物内をスキャン。主導権こそないけど俺の空間であることに変わりはないからね、元の構造と照らし合わせて違和感を炙り出す。
「……知らない地下があるな……?」
「地下」
「うん。ちょっと待ってね入口探す」
「ガンバレェ」
念のためワカバには夏音にくっついてもらうようにしてから更に詳細を探る。これ俺が目を光らせてる限りは何もないと思うけど、多分ちょっとでも目を離したら速攻で連れて行かれるよね夏音。そんなにアランが憎いか……とは思ったが、そりゃ憎いだろうなとも思えてしまうので何とも言えない。
「……大体の場所は分かった。移動しよっか」
「はい」
「ハァイ」
俺達はここで何があったのかは知らない。生存者はいないし全てを知ってるアランはだんまり、ジャックも口を開かないから。分かることはここでみうが生まれたことと、ヘブンの職員は皆死んだってことだけだ。現場検証もなされないまま放棄エリアとして隔離されて、聴取もそこそこに箝口令が敷かれてそれでおしまい。以降ヘブンの名は消えて、再興の兆しすらない。
「ココヤダネェ」
「そうですね、早く帰らないと……」
「イッパイツレテカエッチャウヨ」
「……連れて帰る?」
多分ワカバにとっては何の気なしに放った言葉なんだろうけど、やけにそのワードが気になった。連れて帰る、誰もいないこの場所から、ワカバだけが知る何かを。そうだ、最近俺はその話を聞いてる。
『人間がおかしくなったら増えますからねー。最初の一体がどうやって生まれるのかは分かんないですけど、多分関係はあると思います』
「……」
お化けじゃない、でも善くはないもの。遣霊には見えて、ワカバやテオ達にも見える、けれど俺や皇は見えなくて……アランは、かつて見えていたもの。
「…………」
偶然だろうか、それとも。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




