第四十話 誰もいない支部・肆
「コマッタネェ」
「困りましたね……」
さっきまでよりかはまだ落ち着いてる。少なくとも動揺はないし錯乱もしてなさそう。ワカバが自然な動きで夏音のケアに回ったから少しだけ思考を制御奪還のリソースに回す。放棄エリアって言ったってちゃんと管理してたんだけどな、やっぱり精神干渉するタイプの怪異は狡猾で厄介。ジャックからの報告がなかったらどうなってたことやら。
「……」
アランを狙った、っていうのは多分間違いじゃないだろう。本人の存在強度が高すぎる故に類似で弱めの夏音が狙われたのも。人質……というよりは単純に同類として見られたんだろうな。アイツらに個体認識なんて知能はない。
目的は流石に分からない。ただ、ヘブンの怪異やら怨念がアランに執着するのは至極当然だろう、とも思う。当然だからって許容するかは別なんだけど、その辺つつくとそもそも対処してない方が悪いって話になるからね。人手が足りないんだっての。
「ハァー……」
「っごめんなさい、ぼくのせいで……」
「ああいやお前に対しての溜息じゃない。どっちかっていうと怪異に対してだから」
「マギラワシイナ」
「ごめんって」
謝ったところで自己肯定感が低いコイツには逆効果か。ワカバが慰めるように夏音を撫でる。よりによってアランの代わり、みたいな扱いだからなぁ……本人からしてみれば色々と思うことも多いだろうよ。
「取り敢えず、主導権を取り戻すためにも探索は必要っぽい。裏を返せばこの建物内に本体はいる」
「ジャアヤルカ」
「そうだね。夏音も動ける?」
「はい」
動きを見る感じ本当になんともなさそう。正直あんな悍ましいものと対峙してよく動けるよ。俺もちゃんとは見てないけど明らかに善くはないものだった。それこそ怪異のガワをなくした感じ、体内って言われても頷けそうな空間だったからね。
この建物自体奇妙な清潔さがあって不快ではあるけど、それ以外の異変はあんまりない。あとはもう置いてある家具とか私物であろうもの全てから、個人を特定出来る全てが抹消されている程度で。その抹消方法も大分物理だなとは思うけどこちらに害はない。
「何が目的だ……?」
「ジョウホウシュウシュウ?」
「情報を集めるのに……情報を消すんですか?」
「情報収集した上で残りを食べるんだろうね。全く……最後まで栄養にする気じゃん」
そりゃ人間時代の情報を消しちゃえば存在変質は加速するからね。とはいえもしそこまで考えてるんだとしたらここの怪異、相当狡猾だぞ。
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