第十八話 ”悪魔”・前編
復活。
愉快な一般魔術職員達の協力もあってスムーズに目的地へと辿り着く。一旦ワカバに小さいのを預けて追ってきたわけだけど、どうやら俺が手を出す必要はなさそうで安心。
邪魔されたくないから気配を消すのと、先手を取るために存在を消すのは似ているようで違う。大して長くない廊下の先、扉に手をかけた瞬間に音も気配も置き去りにするように存在を消して、室内の全貌を把握する前に腕の中に出雲を引き寄せた。
「おや。これはこれはウォッチャー氏、お久し振りです、ね?」
目を細め、小首を傾げ、完璧に見える角度で笑みを象る。囲い込んだ出雲を隠すように、それでいてあやすように背に手が当てられる。出雲の腕の中にいる見知らぬ遣霊がにこりと笑みを浮かべてアランを歓迎する。
「アラン・アンシエント……!」
「はい。ヒュリスティック本部セントラル所属、重戦闘区域勤務職員。アラン・アンシエントです」
つらつらと所属を語り周囲を牽制。下に見られることも多い職員だけど、重戦闘区域所属というのはそれだけで特別な意味を持つ。アランが対峙している責任者は別として、中堅位までの職員は挨拶だけで引け腰だ。
「先日、出雲沙織さん……ああいえ、敢えてこう言いましょう。東雲泰誠さんが突発的に出現した混合型怪異に襲撃されていたのを、私と部下で対処しまして。万が一再現性があった場合というのを考慮して一時的保護を実行したのですが。……どうやら、手違いがあったようですね?」
「手違い?ああ……手違いだとも。出雲魔術職員が怪異に狙われたという事実は存在しないし、一時的保護の報告も来ていない」
「……成程握り潰し。では、遣霊出現による緊急保護に関しては?」
「出雲魔術職員が遣霊を出現させたと?それこそ戯言以外の何物でもないだろう」
「では何故、彼は遣霊を抱えているのです?」
アランの棘しかない言葉に相手も負けじと棘で返す。魔術部門の責任者の一人なだけあって、それなりに勤務年数が長いから無意味にレスポンス出来てしまう。過去のアランを知っているからこそ、遅延させることで逃げられると思ってしまう。
アランがまだ責任者として日が浅かった頃、とにかく舐められて無駄な会話を延々と続けさせられていたことがある。本人は性格からして実力行使の方が得意で、まだ口も達者じゃなかったからちょくちょく騒動起こしては一方的に処分を受けて、の繰り返しだった。あやめもリアムも交渉は苦手分野だったし。
「出雲魔術職員が抱えているのは本当に遣霊かね?遣霊とただの幼子を区別する方法はないと聞いているのだが。こちらが把握している状況は『出雲魔術職員が幼児を抱えて遣霊が出現したと言っている』ことだけだ」
「遣霊と幼子の区別方法はありませんが、幼子ならばどこから来たのか非常に興味深い話ですね?こちらではそういったものも研究対象なんですか?」
「それは……そんな事は、ないが」
少しだけ口ごもる相手。非合意のテレポートや召喚は倫理に反する……ではなく、怪異を引き寄せると判断されて全面的に禁止されているから、仮に研究してても肯定は出来ない。これに関しては実例あり、上層部からの通告だから余計に。
「遣霊だと信じられないのならもっと簡単な方法もありますね。あまりおすすめはしませんが……私が遣霊を連れてここから離れれば、順序は前後していますがかつてと同じ結果が得られるでしょう」
「っ…………それは、脅しとみるぞアンシエント」
「ただの幼子ならば被害はないでしょう?事実ならば貴方達の違反行為の隠蔽に加担すると言っているんです。睨まれる筋合いはありませんね」
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